Vol.101「トム・ジョーンズ」 ヘンリー・フィールディング
下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「イギリス文学案内」(朝日出版社)より引用しています。 |
ヘンリー・フィールディング Henry Fielding(1707-1754) 小説家
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解説
フィールディングが「ジョーゼフ・アンドルーズ」に続いて書いた小説としての第2作「捨て子トム・ジョーンズ物語」(The History of Tom Jones,a Foundling)は、1749年に出版された。フィールディングの代表作であるばかりか、18世紀イギリス小説の最高傑作といわれる。好青年トム・ジョーンズの恋と冒険を中心に、総勢200人にも及ぶ登場人物が、それぞれ生き生きと描かれ、整然とした構成の中で入り乱れて活動する散文体の叙事詩のような長編小説である。
梗概
サマセットシアの地主オールワージー(Allworthy)が愛妻を失い、1年ほどロンドンにいて帰宅したとき、ベッドの中に捨て子が眠っていた。情深いオールワージーは、この捨て子を育てることにし、トム・ジョーンズと名付けた。その頃独身であったオールワージーの妹ブリジェット(Bridget)は、やがて一将校と結婚してブライフィル(Brifil)という男子を生むが、夫に先立たれて未亡人となり、ひとり息子のブライフィルと共に兄の家に同居する。こうしてトムとブライフィルは一緒に教育を受けることになったが、トムの方は純情で人情に厚く勇気のある明朗な好青年に成長する。しかしブライフィルの方は陰険で卑屈な偽善者となり、常に腕白者のトムを陥れようとする。
近所の地主ウェスタン(Western)は精力的で単純痛快な猟好きの野人で、その娘ソファイア(Sophia)は純情で明るく、しかもしっかりとしたところのある美人であった。トムはこのソファイアに好かれるようになったので、ブライフィルは嫉妬してトムの不行跡を誇張して中傷したため、トムは恩人オールワージーの誤解を受けて家から追い出される。トムを慕うソファイアも、父親からブライフィルとの結婚を迫られたので、侍女をつれてトムのあとを追う。トムはロンドンへ向かう途中、ある女の危険を救って一緒にいるところへ、偶然ソファイアが到着して激怒し、ふたりは離れ離れになってロンドンへ行く。トムはパートリッジ(Partridge)という愉快な床屋のおやじと道づれになってロンドンへ着く。
ロンドンにおいては、社交界の美貌の女性ベラストン(Lady
Bellaston)がトムを誘惑し、ソファイアもこの女の企みで社交界の伊達男につきまとわれて苦労するが、そこへ娘を追ってロンドンへ来た父のウェスタンが現われ、娘を一室へ監禁してしまう。こうしてトムはソファイアを思いつつ彼女の近くにいながら、さまざまな条件が重なって容易に和解できずにいたし、焼きもちやきの男と、女のことで決闘して獄につながれたりするが、最後にはトムがブリジェットの結婚前の私生児であったことがわかり、オールワージーから財産と身分が与えられることになる。そしてブライフィルの陰険な中傷の悪計も明るみに出て、ソファイアはトムの若気の過失をゆるし、ふたりはめでたく結ばれる。
著者: フィールディング