前の記事へ |  トップページへ |  次の記事へ

Vol.98「ねじの回転」 ジェイムズ

Photo 下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「アメリカ文学案内」(朝日出版社)より引用しています。


ねじの回転 The Turn of the Screw(1898)中編小説

ヘンリー・ジェイムズ Henry James18431916 小説家

……………………………………………………

問題作

 悪霊から純真無垢な幼い兄妹を守ろうとする若い女家庭教師の恐怖体験を描いた作品。ジェイムズは物語の顛末を全知の視点ではなく、想像力豊かな家庭教師の視点から語らせている。その結果、亡霊の存在の有無や悪の力の意味するもの等に関する様々な解釈が生まれ、批評家の間に論争を巻き起こした。

  その代表的な例として、亡霊は性的に抑圧された家庭教師の幻覚であるという説や、家庭教師を救世主になぞらえた宗教的アレゴリー説などがある。一方、ジェイムズが悪に関する記述を避けたことは、それによって生じる曖昧さを読者に自らの想像力で補わせることで、より一層の恐怖心を抱かせるという効果をもたらしている。いずれにせよ、深まる謎と緊張感溢れるこの作品は、単なる幽霊物語として読むことを許さない作者の「ひとひねり」が感じられる仕上がりとなっている。

多重構造

 

 語り手は、この物語が亡き友人から委ねられたある女家庭教師の手記の書き写しであることを告白する。その出来事は、田舎牧師の娘であったその女性がロンドンに住む魅力的な紳士に雇われ、初めて家庭教師として働いた時に起こった。このような前置きをしたのち、生前、友人は手記を朗読してくれたことがあった。語り手はその時の様子を思い浮かべながら、その内容を披露する。

 新米家庭教師の苦悩

 「家庭教師として私が住み込んだエセックスのブライ邸には、親を亡くしたマイルズ(Miles)とフローラ(Flora)という愛らしい兄妹がいました。マイルズは寄宿学校を不可解な理由で放校されたのですが、一切の面倒を見るという契約に従い私が教育することにしたのです。そこへ、子供たちを誘惑しようと、品行の悪かった従僕のピーター・クィント(Peter Quint)と、私の前任者でピーターと淫らな関係にあったジェスル嬢(Miss Jessel)の亡霊が現われるようになりました。私は怯えながらも、兄妹を守ろうと神経を張り詰めて警戒しました。ところが、家政婦のグロウス夫人(Mrs.Gross)は問題の亡霊を見たことがなく、子供たちもそのようなものを目にしたことがないように振舞うため、一人苦悩する日々が続きました」

 犠牲となった子供

 「ある日、断りも無く外出したフローラを湖畔で発見した時、対岸にジェスル嬢の姿を見た私は、今度こそその存在を認めさせようとしましたが、またもや夫人に否定され、フローラにいたっては私に激しい嫌悪の情を示し、錯乱の様相さえ見せたのです。そのため、雇い主である兄妹の伯父のもとへ二人を退去させ、私はマイルズと共に館に残ることにしました。すると今度はクィントの亡霊が現われました。その時、困惑したマイルズの口からついにクィントの名前が出たのです。私は邪悪な霊に渡すまいとマイルズを強く抱きしめました。そして気がつくと、少年は私の腕の中で息絶えていました」

 

【名句】We were alone with the quiet day, and his little heart, dispossessed, had stopped.「深閑とした昼中に私たちは二人きりでした。そしてマイルズのかわいらしい心臓は、悪霊から解放されると、鼓動を止めていました」


「ねじの回転」

著者: ジェイムズ

こちらから購入できます

2011/11/15