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Vol.93「テンペスト」 シェイクスピア

Photo 下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「イギリス文学案内」(朝日出版社)より引用しています。


テンペスト The Tempest(1611-1612)[5幕]ロマンス劇

ウィリアム・シェイクスピア William Shakespeare15641616 

劇作家・詩人

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  作品について

 

1611年から1612年頃書かれ、1623年のフォリオ初版の巻頭に収められた。1609年西インドのバミューダ島に英国船が漂着した事件が構想の一部に関係があるともいわれるが、特定の原典はない。時・所・筋の三一致が守られており、老成円熟した作者の人生静観の態度と寛容の精神がみられ、最後を飾るにふさわしい夢幻劇の傑作である。終幕でプロスペローは魔法の杖を折って無人島から故郷へ帰るが、そこに長い劇作生活を閉じて故郷で平和に余生を送ろうという作者の願望が示されているとみる説もある。

 

梗概

 

ミランの正統の領主プロスペロー(Prospero)は、非道な弟に国を横領され、娘のミランダ(Miranda)とともに船に乗せられて絶海の孤島に流され、半獣半人のキャリバン(Caliban)とエアリエル(Ariel)という精霊を使役して、島の主となって暮らしていた。ある日、弟のアントーニオと彼の悪企みを助けたネープルズ王アロンゾーの一行を乗せた船が近くの海を通るので、プロスペローは12年間研究した魔法を駆使して嵐(tempest)を起こし、船を難破させて彼らを離れ離れに孤島に漂着させる。

 

ネープルズの王子ファーディナンド(Ferdinand)は、エアリエルの歌にひき寄せられてプロスペローの洞窟へたどりつき、そこで父親以外の人間を見たことがないミランダに会い、たちまちふたりは恋に落ちる。プロスペローはファーディナンドの愛の強さを試すために重労働を課して、奴隷の生活を忍ばせる。

 

一方、アントーニオは再び悪計を企み、アロンゾーの弟であるセバスチャンをそそのかして、眠っているアロンゾーの暗殺計画を実行しようとしたとき、エアリエルの力でアロンゾーは目を覚まし、息子ファーディナンドの行方を探しに出かける。またアロンゾーの家来ステファノーから酒をもらって味をしめたキャリバンは、その家来となって島を案内し、プロスペローを殺してミランダと結婚し島の王になれとステファノーにすすめるが、この陰謀もエアリエルにさまたげられる。

 

プロスペローは試練に耐えたファーディナンドとミランダの結婚を許す。そしてふたりに魔術の力をみせ、妖精たちがつぎつぎに登場してふたりを祝福する。そこへエアリエルに導かれたアロンゾーの一行がやってくる。ミラン公爵として彼らの前にその姿を現したプロスペローは、前非を悔いて涙を流し、息子を失って悲しむアロンゾーを洞窟に招じ入れ、ファーディナンドとミランダの楽しそうな姿を見せ、仇敵アントーニオも許して和解し、魔法の杖を折って地下深く埋め、書物を海中深く沈め、エアリエルの任務を解いて自由にしてやると、再び自分の手にもどったミランへ帰る。

 

【名句】How beauteous mankind is! O brave new world. / That hath such people in’t. ――Miranda.V,I,133-4. 人間がこうも美しいとは! ああ、すばらしい新世界だわ。こういう人たちがいるとは!

 


「テンペスト」

著者: シェイクスピア

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2011/08/09