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Vol.85「ユリッシーズ」 ジョイス

Photo 下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「イギリス文学案内」(朝日出版社)より引用しています。


ユリッシーズ Ulysses(1922) 長編小説

ジェイムズ・ジョイス James Joyce18821941 小説家

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解説

「意識の流れ」の手法によって、特定の時と所における人生を完全にとらえようとしたジョイスの実験的野心作で、1914年に起稿し、アメリカの「リトル・レヴュー」誌とイギリスの「エゴイスト」誌に部分的に掲載し、1922年にパリで出版された。3部18挿話からなる。ユダヤ人で新聞の広告取りをしているレオポルド・ブルームは、ホーマーの「オデュッセイア」のユリッシーズに相当し、その妻で歌手のモリー・ブルームは妻ペネロピー、若いアイルランド人の教師兼作家スティーヴン・ディーダラスは息子テレマカスにそれぞれ照応する。ストーリーをもたず、潜在意識の世界を描写している。

第1部

22歳の詩人スティーヴン・ディーダラス(Stephen Dedalus)に関する3つの挿話からなる。1904年6月16日の朝、ダブリン市を見おろす古塔に住んでいる、クロンゴーズ・ウッド・カレッジを出たばかりの教師で詩人のディーダラスは、朝食をしたのち、私立学校へ歴史を教えに出かけ、ローマ史の授業をやり、校長から給料をもらってから、ひとりで海岸をぶらつく。そして文学のことや、自分のみじめな生活や、貧乏なくせに酒場に入りびたっている父親のことなどを、意識の流れにまかせて思いめぐらす。

第2部

主としてレオポルド・ブルーム(Leopold Bloom)に関する13の挿話からなる。同日の午前8時、フリーマン新聞の平凡な広告取りでフリーメーソン結社の一員でもある38歳のアイルランド系ユダヤ人ブルームは、妻と自分のために朝食を用意し、手紙に眼をとおしたのち、外出すると郵便局で手紙を受け取る。彼は別名でタイピストの女と文通し、局どめで手紙を受け取っている。その手紙を材木置場のかげで読んだのち、卒中で急死した友人の葬儀の列に加わり、死んだ自分の子のことや、自殺した父親のことなどを思い出す。

正午に新聞社へ行ったブルームは、同じ頃、校長に頼まれた原稿を届けに来たディーダラスとすれちがった。ディーダラスは給料が入ったので、主筆たちと酒場で一杯飲み、それから国民図書館へ行って文学仲間を相手にシェイクスピア論を元気よくやる(第9挿話)。ブルームも古新聞の広告を調べに図書館へ来るが、またしてもディーダラスとすれちがう。その後、ブルームはホテルで食事をとり、バーに入ったのち、知っている女が産院に入院しているのを見舞い、そこでディーダラスと会った。ディーダラスはインターンの友人と酒を飲んだのち、淫売宿へ行く。ブルームもあとから彼について行く。

第3部

主としてブルーム夫人に関する二つの挿話からなる。ブルームの家まで来たディーダラスと人生経験を話し合ったのち、ブルームは寝床にもぐり込む。そばで妻は愛人のことや人体の神秘などを考えながら夢の世界をさまよっている。この最後の第18挿話は全部句読点なしで続いている。


「ユリッシーズ」

著者: ジョイス

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2011/03/24