Vol.77「恋する女たち」 ロレンス

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恋する女たち Women in Love(1920)長編小説
ディヴィッド・ハーバード・ロレンス David Herbert Lawrence(1885-1930)
小説家・詩人
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解説
前作「虹」に続いて1916年に書かれたが、「虹」の発禁問題などから英米の出版社は出す勇気がなく、1920年にやっとアメリカで限定出版され、翌1921年にイギリスでも出版された。「虹」の続編とみられているが、まったく趣を異にした長編で、中心人物であるバーキンとアーシュラ、ジェラルドとグドルンというふた組の男女の関係を描いた代表作のひとつであり、バーキンは作者自身、アーシュラは妻フリーダを思わせる。
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梗概
イギリス中部の炭坑町に住むブラングェン家の姉妹アーシュラ(Ursula)とグドルン(Gudrun)は、ある日、炭坑主クリッチ家の娘と海軍士官の結婚式を見物に出かける。そこでグドルンはクリッチ家の長男で美貌と精力的な体格をもつジェラルド(Gerald)を見て、発作的に魅力を感じた。アーシュラも、この結婚式で花婿の付添役をつとめた公立学校の視学官バーキン(Birkin)にひかれた。
バーキンはハーミオニという貴族の娘と付き合っていたが、アーシュラと何度か会ううちに、彼女に関心をもつようになり、彼女を自分の部屋へお茶に招待した。そのとき二人は愛について議論したが、情熱的なアーシュラは、独立した二つの個性の完全な結合を主張するバーキンの理想的な考え方についていけなかった。しかし二人は抱きあってお互いに愛していることを告白した。その後、バーキンは病気にかかり、南フランスへ出かけたが、突然帰国すると、アーシュラに結婚を申し込み、彼女をドライブにさそって、夜の森の中で二人は結ばれた。アーシュラはしだいにバーキンの考え方を理解し、両親の反対をおしきって二人は結婚した。
ジェラルドのほうは、土地の人びとを集めて開いた湖上のパーティの夜、グドルンと二人きりでカヌーに乗った時、お互いに愛情を感じたが、その直後ジェラルドの妹が溺死する事件が起こって、二人はしばらく会う機会がなかった。しかしジェラルドの父が末娘のためにアトリエを作り、グドルンを絵の家庭教師に招いたので、二人は再び会う機会が多くなった。ジェラルドは父の死後、共感し合う相手を求めてグドルンの家へ行き、彼女の寝室に侵入して、グドルンと関係を結んでしまった。
クリスマスが近づくと、この二組の男女はヨーロッパ旅行に出かけ、雪深いアルプス山中に滞在する。そこでグドルンは愛もなく彼女の肉体を求めて近づくジェラルドから離れ、彼女の芸術的才能を理解してくれるドイツ人彫刻家と共感し合い、ドレスデンにある彼のアトリエへ行くことにした。ジェラルドはこのドイツ人をなぐり倒し、グドルンを絞殺しようとしたが、途中で殺意をすてると、そのまま雪の中をさまよい、翌日死体となって発見された。彼と男同士の永遠の友情を結びたかったバーキンは、彼の死を悲しむ。
「恋する女たち」
著者: ロレンス
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