Vol.57「フランケンシュタイン」 シェレー

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フランケンシュタイン Frankenstein(1818)ゴシック・ロマンス
メアリー・シェレー William Somerset Maugham(1797-1851)
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解説
1816年の夏、当時十代のメアリー・シェレーが将来の夫シェレーらとともに雄大な自然に抱かれたジュネーヴの郊外に滞在していたころ、当地で合流したバイロンの提案で執筆した怪奇小説。
進化論などが象徴する科学的進歩と神秘主義的錬金術の根底にあるファウスト的な主題に沿って、神に反逆する人間の飽くなき知識欲がもたらす悲劇を描いた空想科学小説の先駆けと言える作品。
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梗概
航海家ウォルトンは、北極海を航行中に、遭難していた科学者ヴィクター・フランケンシュタインを救助して、その話に耳を傾ける。ヴィクターは次第に自己の知識欲が生みだした忌まわしい過去を語り始める。
生命の誕生に関心を寄せたヴィクターは、完全なる美の集合体としての人間の創造に憧れて、試行錯誤の末、2年越しで死者の体をつなぎ合わせて人間の形をした生命体を造ることに成功する。しかしそれは当初夢に思い描いた美の完成体からは程遠く、かろうじて人間の姿をとどめているだけの蠢(うごめ)く醜悪な肉の塊にすぎなかった。ヴィクターはこの研究の成果に幻滅し戦慄して、その醜い怪物を部屋に置き去りにしたまま精神症に倒れる。
その後、末弟ウィリアムが何者かに絞殺されたことを知ったヴィクターは6年ぶりに帰省の途につく。その旅の途中に嵐に遭遇したヴィクターは、稲妻によって闇の中に照らし出された怪物の姿を目撃するとき、弟の死の真相を推察して、自らの罪深さに打ちひしがれる。さらに追い討ちをかけるように家族同様の召使ジュスティーヌが殺人の実行犯として検挙され、無実の罪で処罰される。
ヴィクターは事件の真相を胸に秘め、愛するエリザベスにも告白できずに、慰めを求めて独りアルプスの谷間へと旅立つ。ところが、そこへ再び怪物が現われて、自身が殺人鬼と化すまでの経緯を語り、自分と同種族の伴侶となる人造人間を新たに造るようにヴィクターに迫る。初めは躊躇したヴィクターも、怪物の巧みな弁術によって情にほだされ。怪物の頼みを承諾する。
こうして、ヴィクターは、怪物との約束を果たすために、英国の北の僻遠の小島に渡る。が、嫌悪感に苛まれて作業を半ばで断念する。期待を裏切られて怒り狂った怪物は、ヴィクターの結婚式の夜に来ると言い残して、その場を立ち去る。その後、親友クラーヴァルと新妻エリザベスが怪物に殺され、父親までも心労からこの世を去る。
怪物に対する復讐に燃えるヴィクターは、怪物を追跡して極北の地に辿り着くが、ウォルトンの船の中でその波乱に富んだ人生を閉じる。怪物は創造主であるヴィクターの遺体を目の当たりにして悲嘆に暮れ、極北の地で自らの存在を封印し果てる決意を語ると、氷塊に乗って闇の彼方に消え去る。
「フランケンシュタイン」
著者: シェレー