Vol.53「シャーロック・ホームズの冒険」 ドイル

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シャーロック・ホームズの冒険 The Adventure of Sherlock Homes(1892)ミステリー短篇集
サー・アーサー・コーナン・ドイル Sir Arthur Conan Doyle(1859-1930) 小説家・劇作家
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解説 エディンバラ大学で医学を専攻し、卒業後船医をしたのち開業医となったドイルが、退屈をまぎらすために大学の恩師をモデルにして書き始めた、名探偵シャーロック・ホームズと相棒のワトスン医師が登場する探偵小説。 この第一短篇集は、1891年1月に創刊された「ストランド」誌に6月号から1年間連載して好評を博し、連載が終わるとすぐ、1892年に出版してミステリー作家としての名声を確立した記念すべき作品である。 5冊の短篇集をはじめ、4冊の長篇からなる「ホームズ物語」シリーズは、世界中の言語に翻訳され、ラジオや映画やテレビで繰り返し取り上げられ、舞台化され、朗読テープやCDにもなって、イギリス文化を代表する存在になっている。 ……………………………………………………………… 梗概 この短篇集には、「ボヘミア醜聞」(A Scandal in Bohemia)、「赤毛組合」(The Red-Headed League)、「唇のねじれた男」(The Man with the Twisted Lip)、「まだらの紐」(The Adventure of the Speckled Band)、など12編の短篇が収録されている。いずれも興味津々の名作揃いだが、中でも特に有名な三篇を選んで内容を紹介する。 「赤毛組合」 秋のある日、シャーロック・ホームズの相棒であり助手でもあるワトスン(Watson)がホームズの事務所を訪ねると、髪の毛が燃えるように赤い年配の肥った質屋の男が、世にも不思議な怪事件の相談に来ていた。その男の話によると、新聞広告で一ヶ月前に雇った店員が、新聞広告で見つけた「赤毛組合」の欠員募集に応募するように勧めた。ロンドン出身のアメリカの富豪が、遺言で21歳以上の赤髪の男に、週給4ポンドを支給することにしてあったと言うのだ。勤務時間は10時から2時まで、仕事といえば「大英百科事典」をペンで写し取るだけ。この年収200ポンドの又とない副業に飛びついたところ、8週間後に組合が解散してしまったので、ホームズに相談に来たのだと言う。ホームズは得意の推理で、この組合と大規模な銀行強盗計画の関係を探っていく。 「唇のねじれた男」 1899年6月のある晩、ワトスン医師が診察を終えて休んでいると、夫人と親しい女性が来て、夫がロンドン橋に近い阿片窟へ出かけて、二日も帰って来ないのが心配だと訴えた。ワトスンが探しに行くと、その阿片窟には、老人に変装したホームズがいて、一緒に馬車でケント州へ行こうと言った。そこに住むセントクレア夫人は、ワトスンが訪れたのと同じ阿片窟の三階の窓から、夫が顔を出していたのを見かけ、上がって行ったが夫の姿はなく、唇のよじれた赤毛の汚い乞食がいるだけだった。消えた夫は?唇のよじれた乞食の男の正体は?ホームズは事件の解決に、すでに動き出していた。 「まだらの紐」 ロンドンのウォルタールー駅から鉄道と馬車を乗り継いで、サリー州の美しい田舎にある没落貴族の古い屋敷へ乗り込んだホームズとワトスンが、その屋敷の寝室で女の双生児の姉が先ず怪死し、続いて妹の身にも危険が迫っている世にも奇怪な事件を、姉が死ぬ直前に妹に叫んだ「まだらの紐」という言葉と、その夜、妹が聞いた口笛と金物の落ちる音を手がかりに、見事に解決する。「ホームズ物語」中の魅力ある傑作短篇である。
「シャーロック・ホームズの冒険」
著者: ドイル