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Vol.46「老人と海」 ヘミングウェイ

Photo 下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「アメリカ文学案内」(朝日出版社)より引用しています。


老人と海 The Old Man and the Sea(1952)中編小説

アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ Ernest Miller Hemingway18991961) 小説家

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ノーベル賞

前作『河を渡って木立の中へ』(1950)が不評だったのとは対照的にこの作品は高く評価され、1953年度のピューリツァー賞となり、翌年ノーベル文学賞を受賞する直接の契機となった。当初ヘミングウェイには「海」「空」「陸」についての壮大な三部作構想があり、「海」の部もまた3部に分かれていて『老人と海』はその第1部に予定されていた。第2部と3部はヘミングウェイの死後『海流のなかの島々』として出版された。『老人と海』は生前最後の作品となったが、登場人物の行動を虚飾を廃した文章で単純に描くことにより、かえって神話的、寓話的、象徴的意味など多様な相をもつ作品となった。

不漁の日々

キューバの老漁師サンチャゴ(Santiago)は、漁に出て一匹も魚の得られない日が84日間続いていた。老人は妻に先立たれ一人で小屋に住み、食べるものにも不自由する生活だが、幼いころから漁を教えてきた少年マノリン(Manolin)に慕われ、身のまわりの世話をしてもらっている。9月に入った85日目、夜明け前に舟を出し一人でメキシコ湾流沖へと漕ぎ出した老人に、昼ごろ大物が掛かる。魚は水中にもぐったまま姿を見せず、猛烈な勢いで舟を引っ張っていく。ラインを持った老人の左手からは血が流れ、少年が一緒にいてくれたらとたびたび考える。

死闘

2日目、明るくなってから一瞬、魚が姿を見せる。それはかつて見たことがないほど大きなマカジキで、老人の舟より2フィートも大きい。尖った鼻先は野球のバットくらいあり、頭と背は濃い紫色でわき腹には縞が入り薄紫色をしている。信仰心はあまりない老人ではあるが、この魚を捕らえるためには祈ってもよいと「われらの父」と「聖母マリア」の祈りをつぶやく。大魚との戦いに備え仮眠を取るうちに、老人はよく見るアフリカの夢、夕暮れ時黄色い砂浜に何頭かのライオンがやってくる夢を見る。

3日目、ようやく弱り始めたマカジキは舟の周りを旋回しだす。老人の体力も限界に近く、時おり気を失いかける。この魚になら殺されてもかまわないと考えるほど、高貴で美しい大魚に老人は親近感を抱き、兄弟と呼びかける。しかし、ついに大魚が近づき浮き上がってくると渾身の力を振り絞り銛を突き刺し、死闘は終わる。老人は大魚を舷側にくくりつけ、帆を張り、港に向かう。だがその途中、サメが次々に大魚に食らいつき、老人の抵抗もむなしく骨だけにされてしまう。その夜おそく皆が寝静まった港に着くと、老人は一人マストを肩に担ぎ自分の小屋へと坂を登る。

4日目の朝、愛する少年に見守られて老人は目を覚ます。昼すぎ、団体旅行でやってきた女の一人が、骨だけにされた大魚をサメと勘違いする。少年をかたわらに再び眠りに落ちた老人は、またライオンの夢を見る。

【名句】A man can be destroyed but not defeated. 「人を打ちのめすことはできても敗北させることはできない」

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「老人と海」

著者: ヘミングウェイ

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2010/01/07