Vol.47「三文オペラ」 ブレヒト
下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「ドイツ文学案内」(朝日出版社)より引用しています。 |
三文オペラ Die Dreigroschenoper(完成・初演1928,刊行1929)3幕のオペラ
ベルトルト・ブレヒト Bertolt Brecht(1898-1956) ドイツの劇作家
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あらすじ
第1幕 第1景は乞食の首領ピーチャムの家。ロンドン一帯の乞食たちの首領であるピーチャムは、ぼろぼろの着物や義手や車椅子などを高い料金を取って乞食たちに貸し、また彼らに物乞いをする場所を指定している。やがて細君が登場し、娘のポリーが結婚したがっていることを首領に告げる。首領は、娘の相手が泥棒の大親分メッキー・メッサーであることを知って驚愕する。娘はすでに家出していて見つからない。 第2景はからっぽの馬小屋。メッキーとポリーとの結婚式が行われる。泥棒たちが婚礼の贈り物として盗品を運んでくる。この町の警視総監タイガー・ブラウンも祝いに来る。彼とメッキーとは軍隊時代の戦友であって、メッキーから賄賂を受けとっている総監は、たびたびメッキーを援助してやっているのである。 第3景はピーチャムの家。娘から結婚の報告を受けて怒った乞食の首領夫妻は、メッキーを絞首台に送ってやるぞ、と娘をおどかす。が、ポリーはメッキーと共に生活することを決心している。
第2幕 第4景は馬小屋。ポリーがメッキーに大至急逃げるよう勧める。メッキーに対する世論がこんなに悪化した今となっては、もはや警視総監といえどもほどこす手立てがない。メッキーは後事を妻に託して姿を消す。彼は、一味の者を密告することによって自分の安全を図りたいと思っている。 第5景は娼家。メッキーは木曜日ごとにこの娼家を訪れる。それを知っているポリーの両親は、警官に通報して彼を逮捕させる。 第6景は監獄。かねてメッキーと婚約の仲にあった警視総監の娘ルースィが面会に来る。ルースィは、ポリーと結婚したメッキーを問い詰める。が、メッキーは言葉巧みに、自分のルースィへの愛が変わらぬことを納得させる。そこへポリーが登場したため、嫉妬に駆られた女同士のすさまじい喧嘩がはじまる。ポリーは迎えに来た母親に引きずられ、連れもどされる。メッキーは、ルースィに助けられてブタ箱をずらかる。彼は歌う、「食べるが先さ、道徳はお次」。
第3幕 第7景はピーチャムの家。ピーチャムは警視総監に、メッキーを逮捕しないならば、乞食のデモで女王戴冠式の行列を妨害してやるぞとおどす。 第8景は監獄。再び逮捕されたメッキーは、絞首刑に決まり、絞首台に連行される。その時、女王からの急使が到着して、恩赦状をわたす。メッキーは貴族に列せられ、皮肉なハッピーエンドとなる。
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付記
ジョン・ゲイの『乞食オペラ』に取材し、ブルジョアも実は泥棒とかわりがないものであることを示しながら、腐敗したブルジョア階級をするどく諷刺した作品。クルト・ヴァイルの作曲がこの作品にマッチして、非常な好評を博した。上演や映画化に際して、さまざまなスキャンダルをまき起こしたが、これはブレヒトの名をいっそう高める結果となった。 「三文オペラ」 著者: ブレヒト