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Vol.36「ロード・ジム」 コンラッド

Photo 下記の作品案内は、代表的作家の生涯・主要作品が要領よく解説され、さらに充実の翻訳文献を付した、現在入手しうる最良の文学案内として好評を得ている世界文学シリーズからの一冊、「イギリス文学案内」(朝日出版社)より引用しています。


ロード・ジム Lord Jim1899-1900長編小説

ジョウゼフ・コンラッド Joseph Conrad18571924) 小説家

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解説

コンラッドの代表作とみられているこの長編は1900年に出版された。主人公を知るマーロウ船長が語る形式を用いて、自分の道徳的堅実さを過信していた若い船乗りが、自分の心の底に潜む無意識的な卑劣さを発見して苦悩する姿を描き、浪漫的要素と近代文学的心理描写が巧みに結びついている傑作である。

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梗概

イギリスの牧師の息子であるジムは、青春の理想にもえてパトナ号の船員となる。800名のマレー人巡礼を船客として航海中の老朽船パトナ号は、ある夜、突然座礁して、いつ沈没するかわからない状態になった。船客たちはなにも知らずに眠っている。7隻の救命ボートでは800人の船客たちを救い出すことはできない。そこで無責任な白人高級船員たちは、乗客に危険を知らせず、自分たちだけでボートに乗って密かに脱出しようとした。ジムはこの卑劣な行為に協力せず、船客と共に運命を決する覚悟でいたが、いよいよ船員たちがボートに乗り込み、本船を離れようとした瞬間、ジムはほとんど無意識に飛びこんでしまった。ジムはこの無意識の本能的な行為をとった自分自身を憎んだ。ところがパトナ号は奇蹟的に沈まず、漂流中をフランスの軍艦に助けられて無事に港へ着いた。白人船員たちの言語道断な行為は問題となり、裁判の結果、卑劣な船員たちは罰せられ、ジムも船員免許状を取り上げられてしまった。

マーロウ船長がジムを知ったのは、このパトナ号事件の裁判のときで、船員の資格を失ったジムを精米工場へ世話した。しかし、同じ工場へもとのパトナ号の同僚が流れ込んでくると、ジムは過去の卑劣な行為の思い出に悩まされ、そこを飛び出して放浪の旅に出る。そしてボンベイ、カルカッタ、ペナン、バタビアへと流れて行く。ジムはどの町で働いても人びとから愛されるが、パトナ号事件の思い出と自己嫌悪とが彼を苦しめ、一ヶ所に落ち着けない。

マーロウ船長は南洋貿易で財を成したドイツ人の友人スタインに頼んでジムを救おうとする。スタインはパトゥアン島の酋長にジムの世話を頼み、彼をその島に送る。ジムは土民の村で献身的につくし、勇敢に戦って難敵を退け、たちまち島の英雄として土民から尊敬されるようになり、トゥアン(領主)の尊称で呼ばれるようになる。そして以前のトゥアンであるコーニリアスの娘を愛するようになった。

ある日海賊ブラウンと称する白人の無法者が島を襲撃するため上陸した。ジムを快く思っていないコーニリアスはこの海賊に内通して襲撃の道を教えたため、ジムの平和交渉は失敗し、酋長の息子は戦死し、ジムは土民の尊敬を失って悪魔のようにみなされた。ジムは名誉や恋をすてて酋長に会いに行き、最後に臆病者の汚名を返上し、酋長に射殺される。

【名句】You shall judge a man by his foes as well as by his friends.

    人間はその友人だけでなく敵によって判断すべきである。


「ロード・ジム」

著者: コンラッド

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2009/09/01