Vol.28「嵐が丘」 エミリー・ブロンテ

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嵐が丘 Wuthering Heights(1818)長編小説
エミリー・ブロンテ Emily Bronte(1818-1848) 女流小説家
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解説
エミリーの書いた唯一の小説で、彼女はこの一作によって英文学史に不滅の名を残している。悪魔的性格をもつ主人公のヒースクリフの熱烈な愛と憎しみが、ヨークシアの自然を背景に描き出されている名作である。大部分の物語は、もと嵐が丘の家政婦であったネリーが、近くの屋敷を借りたロックウッドという男に語る形式で進められている。
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梗概
ワザリング・ハイツ(嵐が丘)はヒースクリフ(Heathcliff)氏の住家の名である。「ワザリング」というのは、この地方で意味のある形容詞で、空が嵐になることをいうのだが、この家は嵐に吹きさらしになる位置であった。
ヒースクリフは捨て子で、昔この家の主人であったアーンショウ氏に拾われて可愛がられた。彼は黒い顔をした強情な子で、この家の娘キャサリンと不思議に気が合ったが、息子のヒンドリーは彼を憎み、父の死後ヒースクリフを下僕扱いにして虐待する。やがてキャサリンは近くに住むリントン家の長男エドガーと親しくなる。キャサリンを密かに愛していたヒースクリフは、彼女がエドガーと婚約したことを知ると、雷雨の夜に絶望して家出したきり消息を絶った。
3年後、ヒースクリフは富を得て帰って来るが、キャサリンはすでにエドガーの妻になっていた。ヒースクリフは復讐にとりかかり、かつて彼を虐待したヒンドリーの堕落に拍車をかけ、エドガーの妹イザベラを誘惑し、かけおちして結婚した上で彼女を虐待し、冷酷残忍な本性を発揮する。
キャサリンはエドガーと結婚後もヒースクリフが好きだったので、エドガーがヒースクリフを手荒く扱ったことが原因で部屋に閉じこもって絶食し、ついに正気を失う。死にかけているキャサリンの前にヒースクリフが現われ、彼女をしっかりとだきしめる。キャサリンが女の子を出産して死ぬと、ヒースクリフは木の幹に頭を打ちつけて悲しんだ。いよいよ復讐の念に燃えた彼は、ヒンドリーから屋敷をまきあげ、その子ヘアトンを虐待する。また、イザベラとの間に生まれたヒースクリフの息子リントンと、キャサリンの生んだ娘とを結婚させて、ついに二つの屋敷を自分の手中に収める計画に成功する。
だがヒースクリフは初恋の女キャサリンのことがいつまでも忘れられず、かつて彼女が死んだ時、その墓を掘りかえしたほどであったが、ついに彼女のまぼろしを夢みて恍惚となり、狂乱して断食する。そして死ぬ前に家政婦のネリーに「おれはもうすぐおれの天国に達するところだ。他人の天国なんておれにはまったく無価値だし、ほしくもない」といった。翌朝、ヒースクリフは窓から入るひどい雨にうたれたまま自室で死んでいた。
「嵐が丘」
著者: エミリー・ブロンテ