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2011年2月16日 (水)

景気のいい英語
Can Japanese economy gather real momentum?
――日本経済は本当に勢いづくのだろうか?

最近、アメリカと日本の経済状況にも明るいニュースが増えています。2010年度の企業の第4四半期(10~12月)の決算が発表され、アナリストの予想を超える好業績が相次ぎ、新興市場におけるインフレ懸念(前回ふれました)から、より安定した先進国に資金が戻りつつあるためです。日本に関しては、ずっと「景気の悪い」言葉が英語ニュースでも目立っていましたが、最近ではちょっと上向きの表現が増えてきています。そこで、今回は「景気のいい英語表現」を中心に、経済ニュースを見ていきましょう。

まず、簡単でバリエーションが豊富なのが株価の上昇を表現する英語です。 一番一般的なのは、やはり <go up> です:

Thanks to better-than-expected earnings reported by the Japanese exporters, the Nikkei 225 went up.
(予想を上回る輸出企業の決算が報告されたことにより、日経平均は上昇した

earning …………企業の収益、売り上げ
exporter…………輸出(関連)企業
Nikkei 225………日経平均株価(東京証券取引所第一部に上場する株式のうち225銘柄を対象にしている)

<better-than-expected> は経済ニュースでよく使われますが、 アナリストやエコノミストが事前に予想していた数値を上回る場合に使われ、これが出てくると大体株価は上がるとみていいでしょう。上記の英文は、株価がただ「上がった」ことを表現します。他にも、同様に「上昇した」ことだけを意味する場合はいくつかの動詞が使われますので覚えておくとよいでしょう。<gain>、<add>、<advance> などがあります。

価格などの上がり具合によって、他にも様々な表現があります。たとえば、<jolt>。急激な揺れ、衝撃を意味しますが、経済で使われる場合は 「急激な上振れ」、「上昇」を意味します:

Better-than-expected earnings reported by the Japanese manufacturers have sent a jolt to the Nikkei 225.
(予想を上回る日本の製造業の決算が報告されたことにより、日経平均は一気に上昇しました)

他に「急激な上振れ」を表現する英語には、 <jump>、<spike> などがあります。<jump> は文字通り「ジャンプするように急に上がる」こと、<spike> は「トゲ」を意味しますから、 株価グラフが「トゲのようにとんがった形で一時的に急上昇」した時に用います。

主要銘柄が一斉に上昇して平均株価を大きく上げたときは <surge>、<soar>、<climb> がよく見られます。数日、あるいは数週間連続して上昇した場合は、<rally> が一般的に使われます:

The stock market is in its seven week straight rally.
(株式市場は7週連続して回復、上昇しています)

straight……………………連続した

反対に、じわりと、あるいはちょっと上がるような時は次のように言います:

Weakened yen helped the Nikkei stock average to edge higher.
(円安(弱まった円)は日経平均をじわりと上げた)

為替レートに関しても英語は表現のバリエーションが豊富です。<weakened yen> は弱くなった円、 要するに円安基調のことです。円が安くなると、間接的に輸出に頼る日本の製造業の業績が回復することを見越して株が買われるので、 <edge higher>、<edge up> などと、 <edge> を使って「じわりとつめよるように上がる」ことを表現します。大台とされるような価格を乗り越えたときなどはこのように表します:

Dow Jones Industrial Average has gone over $12000 as investors welcomed positive corporate earnings and looked forward to the State of the Union address by President Obama.
(ダウ工業株30種平均は好調な企業決算を好感し、オバマ大統領の一般教書演説への期待から12000ドルを超えた)

Dow Jones Industrial Average……ダウ工業株30種平均
(ダウ・ジョーンズ社が発表する、工業株30銘柄を対象とした平均株価指数)
go over ………………………………~を超える
the State of the Union address…一般教書演説
(米国大統領が、アメリカ合衆国議会両院の議員を対象に行う演説)

日本とアメリカの経済は密接につながっているので、アメリカ合衆国で明るい決算や政府による経済指標の発表があると、日本市場も好転することが多いです:

The Nikkei is at an 8th month high led by auto-related shares rising sharply on the back of hopes for a turnaround in the US markets.
(アメリカ市場が回復基調に転換しつつあるとの期待を受けて自動車関連株が急上昇し、日経平均は過去8ヶ月間で最高水準にある)

at~(期間)high……~(期間)で最も高い
on the back of~……~に引き続いて、~に加えて、~を受けて

<turnaround> は、 損失などからの利益への黒字転換、好調への転換を意味します。低迷していた状況から、ゆっくりと回復基調にのり、回復のスピードが加速する時には <speed>、 <momentum> が用いられます:

The US economy gathered speed in the 4th quarter of 2010, seeing a large gain in consumer spending and strong exports, removed doubts about the sustainable recovery.
(アメリカ経済は消費の大幅な増加と堅調な輸出から持続的な回復への疑念が払拭され、2010年度第4四半期に加速した)

gather speed……………加速する(=スピードを集める)
see ………………………~を受けて(=~(現象など)を見て)
consumer spending ……一般消費者による消費支出、消費

なんだかこういった「景気のいい英語」を見ていくと気持ちが上向きになってくる気がしませんか? ただ、本当に「持続的に回復」してゆくためには、新興市場の成長による輸出頼みでは心もとないことは、 インフレや社会不安でBRICs(新興経済諸国のブラジル、ロシア、インド、中国の英語国名の頭文字を取ったもので、「ブリックス」と読みます)から資金が引き上げられていることからも明らかなように、やはり内需が肝心です。そのためには、「雇用」状況を改善しなくてはいけません。多くの人が、好調な株式市場のニュースを見てもこんな風に思うことでしょう:

The stock market may be up, but where are the jobs? Where is the tangible recovery?
(株式市場は上がっているかもしれないけれど、仕事はどこに? 成長の実感はどこに?)

tangible…………実感できる(手に触れることができる、現実の、という意味から、このような訳にしました)

やはり日本でも大事なのは雇用です:

Let's hope for job creation and consumer spending in Japan to finally pick up so that the economy can have the real momentum.
(経済が本当に勢いをつけるために、雇用創出と消費が、ようやく回復するように期待しましょう)

job creation………雇用創出(=仕事の創出)
pick up ……………回復する
momentum……………速力、はずみ、勢い

<momentum>、すなわち「勢い」こそ、経済だけでなく色々な分野で日本に一番必要なものですね。もうすぐ春ですし、「勢い」よくいきたいものです!