“best wishes!” 年末年始の「ご挨拶」―“greetings”で誰かのために想うこと
クリスマスシーズンが今年もやってきました! 私が愛用しているコーヒーショップでは毎年クリスマス限定ドリンクが発売され、気分はどんどん上がっていきます。ただ、「クリスマスシーズン」という一言でさえ、アメリカでは注意して言わないといけません。当然ながら「クリスマス」はキリスト生誕を祝う、キリスト教徒の祝日なので、 特定の宗派を優遇することのないように、 メディアでは <holiday season> を使います。
実はこの <holiday>、ただ単に「お休み」という意味ではないのです。 もともとは <holy day>、つまり「神聖な日」ということ。クリスマス前後には、ユダヤ教徒もハヌカという、エルサレム神殿をふたたび神に奉納したことを祝うお祭りがあるので、ユダヤ教徒は:
■Merry Christmas!
のかわりに:
■Happy Hanukkah!
と言います。 “Merry Christmas!”と言われた場合に、お互いにクリスチャンであれば:
■And the same to you.
(そちらにも同じく)
と返しますが、先方がユダヤ教徒の場合は:
■And a happy Hanukkah to you.
とお返しするようにしたほうがいいでしょう。いずれにせよ「聖なる日」であることは間違いないので、“Merry Christmas!”と言うよりは:
■Happy holidays!
と言った方がアメリカでは無難、 ということですね。
こういった <holiday season> に交わされる挨拶のことを <holiday season's greetings> と言います。クリスマスカードなどでも、よくこの <greetings(挨拶)> を見かけます:
■Season's greetings and best wishes for the new year.
この <season's greetings> は直訳すれば「季節のご挨拶」ですが、一年の中でもクリスマスや年末年始の特別な時期に交わす挨拶なので、要するに「おめでとうございます」ということです。ですから上の例文は、
「新年おめでとうございます。新しい年が良き一年となるようお祈り申し上げます」
となります。<best wishes> もよく出てきますね:
■Sending you best wishes for a very merry Christmas.
(とても幸せなクリスマスになるようにお祈り申し上げます)
■Best wishes for the holidays and happiness throughout the year.
(あけましておめでとうございます。今年も幸せな一年となりますように)
ただ、このような時節柄の挨拶というのは、定型化されたものなので、訳しにくい部分があります。特に、<best wishes> はとても曖昧(あいまい)な表現で、クリスマスや新年に関して <best wishes> を誰かにお送りする場合は、「おめでとうございます」や、「良き新年となりますように」といった意味合いです。一方、誰か特定の人に向けられる <best wishes> もあります:
■Please give/send my best wishes to your parents.
(くれぐれも(ぜひ)ご両親によろしくお伝えください)
やはり挨拶として定型句となっているので、<best wishes> は丁寧な表現になり、この場合は手紙の末尾に書いたり、礼儀正しいお別れの挨拶の時に用いられます。 <wish> は「願う」ことですから、自分のなかでのありったけの想いを込めて、その人に幸あれと願うのが <best wishes> です。 とてもステキな表現ですね。日本語だと「ご多幸をお祈り申し上げます」が近いように思います。
類似の表現としては <regards> や <compliments> があります:
■My boss sends his compliments/regards to you.
(上司があなたにくれぐれもよろしくお伝えくださいと申しておりました)
<compliments> は、「褒め言葉・賛辞」の意味が一般的ですが、丁寧な挨拶で「よろしく」という意味です。結婚式の引き出物に英語で <compliments> と書いてあったりしますが、 これは「贈り物」という意味です。それが言葉であったとしても、クッキーなどのプレゼントであったとしても、誰かに想いを込めた何かを「贈る」時に用いられます。
<regard> は「~とみなす」という意味の動詞として知られていますが、名詞として「誰かに対して何かを『想う』こと」、「注意を払って見つめること」も意味します。そこから転じて、「誰かに対しての丁寧な挨拶」という意味でも使われます。 この <compliments>、<regards> 、<best wishes>(全て複数形であることにご注意ください) は、とくにあらたまったオケージョン以外でも、遠方に住んでいたり、なかなか会えない知人・友人に会う可能性がある人と会った場合などに、気軽に用いることもあります:
■If you happen to see Amy, send her my best wishes, I haven't seen her for ages.
(エイミーに会うことがあったら、よろしく言っておいて。もうずいぶん会ってないのよ)
社会に出ると「挨拶が大事」とよく言われます。 <greet(挨拶する)> はもともと古英語で、<come in contact with ~(~と出会う)> とういう意味でした。見知らぬ人との最初の「コンタクト」において、一番大事なのはやはり「挨拶」と英語文化圏でも考えられていたのではないでしょうか。年末年始は、いつもお世話になっている人や、なかなか連絡が取れない人との旧交を温める季節。あらためて、今までの多くの「出会い」について思いをはせ、感謝する機会としてはいかがでしょうか。
■May the warmth of friendship and the wonders of the season of contacts make your holidays bright!
(友情のぬくもりとクリスマスシーズンの出会いの奇跡がこの年末年始をあなたにとって輝きに満ちたものとしてくれますように!)