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2010年11月17日 (水)

「からだ」を使った spiritual な表現

「言語」というものは基本的に 「頭脳」 を中心とした、「精神的(spiritual)」なものであって、 あまり「肉体的(physical)」なこととは関係がないもののように捉えられがちです。現代人はさまざまな「悩み」を抱えていますが、頭の中で「言語」を駆使してひたすら悩んでいるうちに、頭の中の妄想が肥大化したり、現実をより悪く捉えてしまうことがあります。現代人は、頭でっかちになりがちです。一方で、精神的なストレスが原因で肩こりや、ひどい頭痛に悩まされてしまうという現象は誰にとっても身近な問題です。

英語でも日本語でも、「からだ」にまつわる言語表現は豊富です。そういった「からだ」にまつわる表現には、現代人が悩む「からだ」と「こころ」の関係の問題を解くヒントが隠されているように思います。

日本語で「肚(はら)がすわる」という表現があります。この「肚=下腹部」は日本人にとってとても重要な体の部位です。日本人は、下腹部の「丹田・肚」にその人の魂があり、エネルギーの源があると考えてきました。英語でこれに相当する言葉は <gut> です。

たとえば、 本能的に、 第六感で感知するような「虫の知らせ」や「勘」のことを英語で <gut feeling> と言います:

“I have a gut feeling that they will get along.”
(「私にはあの二人がうまくいくというがあるの」)

<gut> は直訳すると「内臓」ですが、カタカナ英語で「ガッツ」と言うように、「肝っ玉」、「胆力」、「気合」、「根性」、「度胸」 などを意味します。英語でも「肚」は、エネルギーの源であると考えられているのです。だからこそ、「肚」が知らせることは、論理的説明を超えた、 本能的な情報である <gut feeling> と考えられるのでしょう。

武術や日本舞踊など、日本の伝統的なからだの使い方を継承している世界では、きちんと 「立つ」 ことを大事にします。しっかりと「立つ」 ためには 「肚がすわって」いる状態、つまり丹田がきちんと意識されていないとバランスが取れません。「立つ」ことは英語でもとても重要視されていいます。たとえば <stand up against~> は「~に立ち向かう」ことを指します:

“I hope I have enough guts to stand up against my boss and tell him that his new sales quotas are just impossible to achieve under current circumstances.”
(「現在の状況下では、当たらしい売り上げノルマの達成は不可能だと面と向かって伝えるに十分の勇気をもてるといいのだが」)

以前、 “Express Yourself” で 「地に足がついた」 をあらわす <grounded> と <down to earth> という表現を紹介しました。

URL:
http://bit.ly/9HSIhQ

人間は、立って二足歩行をする動物ですから、やはり「きちんと立てる」 ことはとても大事。 足に力がみなぎって大地をふみしめ、すっくと立つことによってはじめて、人は敵やピンチに対して勇敢に <stand up(立ち向かう)> ことができるようになります。

「ことば」は「感情」を誰かに伝えてくれる道具ですが、この「感情」という言葉自体が「動き」と関係の深い単語です。なぜなら、「感情(emotion)」は、「動き(motion)」に「外へ」 をあらわす接頭語の <e> を付けた 「ことば」 だからです。 つまり、からだの内側から外に向かうものが「感情」。 感情がたかぶると、 身振り手振りが大きくなるように、「感情 (emotion)」 と 「からだの動き (emotion)」  は切っても切り離せない関係にあるのです。だからこそ、「からだ」 の内側から外に向かって流れる 「きもち」 の自然な流れを「抑圧(repress)」してしまうと、「抑うつ(depression)」などの現代医学であつかわれる精神的な不調をきたしてしまうのではないでしょうか。

<spiritual> ということばも、「精神的」と訳されることから、生身の 「肉体」 とはあまり関係がないような印象をもたれていますが、「生気にあふれている、元気がいい」ことを <spirited> といいます。たとえば:

He is a spirited young man.
(「彼は生気あふれた、元気のいい若者だ」)

といった形です。

このように 「からだ」 に関係した英語表現を見てきますと、もともと西洋でも「精神的(spiritual)」なものと「身体的(physique, physical)」なものは分けるのではなく、むしろひとつのまとまりとして捉えられていたことがわかります。 それは、 人間「個人」を <individual>、 つまり <divide(分割)」することができない(否定を表す接頭語 <in> をつけて)ものとあらわすことが如実に語っているように思います。

「言語」はその文化における 「からだ」 の「知恵」を受け継ぐものでもあり、0と1で表されるデジタルなデータに還元されるのは「ことば」のほんの一部に過ぎないのです。日本文化では「ことば」に「魂」が宿るという「言霊(ことだま)」という考え方があります。 英語に直すと <spirit of words(言葉の魂 = 言葉)> は、「からだ」と「ことば」の関係、あるいは「からだ」と「こころ」の関係をおろそかにしないように、私たちにそっと諭してくれているのではないでしょうか。

最後になりましたが、読者の皆様にささえられて、今回で“Express Yourself”は連載100回を数えます。これまでのご愛読とご支援にこころから御礼申し上げます。 これからも、<spirit of words> を大切にする気持ちを忘れないように「肝 (gut)」に命じたいと思います。

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