「集中力」を高めるためには「落ち着き」が大事:
Concentration and Composure
「集中力がある」 ことは良いことだ、 と誰もが思っていることでしょう。全世界が注視し、国民の祈りにも似た期待がかけられる、想像を絶するプレッシャーの中で、PKの一点一点をゴールに入れるサッカー選手たちの表情を見ていると、つくづくそう思います。パラグアイ戦の本田選手は、PK戦に入る前に、祈るような仕草をしていましたね。
生放送でスタジオでニュースを読む時、現場から生放送で中継する時に一番必要なのは「集中力」です。スポーツ選手が実践しているメンタルトレーニング法を真似してみたり、私なりにいろいろと試行錯誤する日々です。サッカーワールドカップの試合を見ていて、あらためて「集中力」の威力を感じました。
英語で「集中力」は、<concentration> と表現します:
■What's most important in a penalty shootout is the player's level of concentration.
(PK戦において最も大事なのは選手の集中力のレベルだ)
※penalty shootout…………………(サッカーの)PK戦
「集中」 というのは、 一点に注意力が集まる、 ということ。 つまり、人の思考・注意力の「濃度」が濃くなる、ということです。concentration は、<concentrated fruit juice(濃縮果汁)> のように「濃度・濃縮」の意味で使われることもあります。
逆に、何か別のことに心がとらわれ、注意力が散漫になってしまうことを <distraction> と言います:
■I was trying to concentrate on my work but was distracted by the cheering of my colleagues watching the World Cup match.
(私は自分の仕事に集中しようとしていたのですが、ワールドカップの試合を観戦する同僚たちの声援で、気が散ってしまいました)
では、なぜ「集中」が大事なのでしょうか? それは「落ち着き」を得ることができるからです。プレッシャーのかかる大きな仕事をこなす場面では、自分が持てる能力をフルに発揮できるように「落ち着いて」臨むことが一番です。でも「緊張」してしまうと、なぜかまったく別のことを考えてしまって、目の前のことに「集中」できなくなってしまう、という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
「落ち着き」に相当する英語はいくつかあります:
composure
■Even when you are being yelled at by a customer, you have to maintain your composure and handle the crisis.
(お客様に怒鳴られているときでも、落ち着いて危機の対処に当たらないといけません)
pull oneself together
■I know you are quite emotional right now, but you have to pull yourself together before you go out there and make a presentation to our clients.
(今、あなたが感情的になっているのはわかりますが、顧客の前に出てプレゼンをするまえに落ち着き・心の平静を取り戻さないといけませんよ)
<composure> は、もともと「構成」、「組み立て」という意味です。そして、<pull oneself together> は、わかりやすく言うと、「バラバラになった自分をひとつにまとめる」こと。どちらの表現も、「散り散りになってしまった心をひとつにまとめる」 、 注意力を「一点に集める」ことから「落ち着き」を得るという考えに基づいていることがわかります。つまり「集中力を高めること」=「落ち着くこと」なのです。
他にも「落ち着き」を意味する英語表現には、<keep cool(冷静さを保つ、 落ち着く)>、<keep one's head (落ち着きを保つ) > などがあります。「クール」な気持ちを保ち、カッカしない、ことが大事なのがわかりますね。 中でも言い得て妙なのが <presence of mind> で、 これは <composure> と似たような形で使われます:
■Even at the time of emergency, a news anchor should maintain his or her presence of mind.
(緊急事態においても、ニュース・アンカーは落ち着き(平静さ・冷静さ)を保たないといけません」)
※anchor ……………ニュース番組の責任者兼キャスター
<mind(思考・意識)> が <presence(存在)> している、<presence of mind> が「落ち着き」であるとは、 まさにその通りだと感心します。動揺したり、激しく怒ると、日本語では「我を忘れる」と言います。感情的になると、心の注意力は一点に「集中」するどころか、どこかに吹き飛んでいってしまう、ということなのでしょう。
一方で、興味深いのが、大変集中力が高い状態のことも「我を忘れる」という表現が日本語・英語両方で使われることです。たとえば:
「彼は我を忘れて読書に集中した」
■He lost himself in his reading.
■He was absorbed in his reading.
これは、ほかのものに向けられる集中力が一切なく、すべてが「読書」という行為に集中した、ということで <lose oneself>、 完全にその対象に吸収されるほどに夢中になる、状態を <absorb> で表す表現です。
これは私の個人的な考えですが、「我を忘れる」には良いものと、悪いものがあるように思います。それは、心の状態に左右されます。読書に夢中になっている時は、「我を忘れて」いても「楽しい」状態です。逆に、<lose one's presence of mind>、 理性的思考が吹き飛んでしまう時は、 心に嵐が吹き荒れている状態。 何かに不安だったり、緊張していたり、恐怖におののいている時です。
ここ一番!という時の集中力=<concentration> は、心が平和で、穏やかな湖面のように澄み切った状態でこそ一番発揮されるのではないでしょうか。
■The best way to achieve a high level of concentration is to maintain peace of your heart on daily basis.
(高い集中力を達成するための最良の道は、心の平和を日常的に保つことです)







