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2010年6月16日 (水)

なぜ former は「前者」で、latter は「後者」なのか?

新聞のコラムなどでよく「前者・後者」という表現が使われます。たとえば、

「鳩山前首相と菅首相は、どちらも政権交代を果たした民主党に属すが、その政治的背景はまったく異なる。前者は長年日本の支配政党であった自民党に所属していたことがあり、代々の政治家を輩出してきた家系の出身だが、後者は一度も自民党に所属したことのない、『普通のサラリーマン家庭』に育った市民運動出身の政治家である」

このように、前に出てきた人物、事柄の名称を二度くりかえさずに済む「前者・後者」という表現は便利です。英語では <former> と <latter> を使い、このように表します:

“Former Prime Minister Hatoyama and Minister Kan both belong to the Democratic Party of Japan which has actualized the change of government, but their political backgrounds present stark difference. The former once belonged to the Liberal Democratic Party, a party which ruled Japan for many years, and was born in a family which has been producing politicians for generations, but the latter has never belonged to the LDP, brought up by a ‘regular salarymen's family,’and comes from a grass-roots political movement .”

Democratic Party of Japan ………民主党
actualize …………………実現する
change of government … 政権交代
stark ………………………明確な、明白な、まったく
(他には regime changechange of administrationpower shift などがあります)
Liberal Democratic Party …………………自民党
rule ……………………… 統治する
grass-roots (political) movement …… 市民運動
(「草の根=grass-roots」 ということで「市民運動」を意味します)

この <former / latter> の語法、 大学受験のやや難易度の高い文法として扱われますが、いまいち使い方がよくわからないままに終わっている、 ということはありませんか? でも、 実は単純で、<former> は前に出てきたもの、<latter> は後に出てきたものということです。<former> は単体で使われることも多く、 鳩山「前」首相のように、「前職・前の代」を表すときに用いますが、本質的に「前」を意味することは一貫しています。

上の例文の場合、セットで使われる <former /latter> がそれぞれ何につながるのかというと、先に出てきたのが「鳩山前首相」ですから、つづく文章で <former> は鳩山氏を指し、 <latter> は現首相である菅氏となります。

この用法が日本人にわかりにくい原因は、なぜ <former> が「前」で <latter> が「後」なのか、その英語の字面から連想しづらい、ということにあると思います。この問題は、<former> と <latter>の語源を知ることによって解決できるかもしれません。

<former>  という英語が使われはじめたのは12世紀ごろのことですが、そのころから「時系列の中で、前におきた事柄」を意味していました。もともとは、<forma> という「最初、第一」を意味する言葉の比較級だったのが <former> ですが、そのうち比較級としてあまり使われなくなり、「前」という意味が残っていった珍しいケースです。

「何よりも、まず、第一に」という意味で、<first and foremost> という慣用表現があります。これは「一番先の、前の、第一位の、主要な」、「第一」を意味する <foremost> と、「一番」を意味する <first> をかけあわせたもの。 たとえば次のように使います:

First and foremost, ‘reading’ is what counts in improving your English proficiency.
何よりも、まず(第一に)『(英文の)読書』こそがあなたの英語レベルを上達させるには重要です)

proficiency ………………上達、熟練

この <foremost> も、もともと <former> と同じファミリーに属す言葉で、根っこは <fore> です。before は 「前に」という意味の大変一般的な英語ですが、ここにも <fore> があるように、<fore> 自体が何かの「前」を意味します。テニスの「フォアハンド=forehand」も、腕を前に出して打つから <fore> hand なわけです。<former>も、この <fore> から出てきた、と考えると、「前者」を指すことが思い出しやすくなるのではないでしょうか。

さて、<latter> ですが、<T> がふたつあって、 発音が「ラッター」ないし「ラダー」なので、はじめはピンときませんが、「遅い、遅れた」 を意味する <late> の古英語が原型です。 元は、「二つあるモノの内の、二つ目」を意味し、そこから「後からくるもの」、「より遅くにくるもの」の <later> の意味が派生してゆきました。

参考(『Online Etymology Dictionary』):
http://www.etymonline.com/index.php?search=foremost&searchmode=none

「前者・後者」 とまったく同じ形で用いることができる <former/latter> は、このように、その歴史的なりたちを見てみると、古英語の名残を残した格式ある表現だと言えます。複雑な文章をわかりやすく整理することもできるので、ビジネス会話で使ってみたり、英語で文章を書くときにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。