夢を「実現」する英語―realize, materialize, fulfill
自分自身の夢を「実現」する、やりたいことを「具現化」する、という意味で「自己実現」という言葉がよく用いられます。「実現」とは何かを「現実化」すること。 英語でも、「現実=real」 という言葉を用いて、次のように言います:
■The people of India saw realization of their hope upon the nation's independence from the United Kingdom.
(インドの人々は英国からの独立に際して、自分たちの希望が実現するのを見た)
※see~ は、「物理的・視覚的に何かを見る」だけでなく、出来事が起こるのをその時代の人々が「実感した」という「抽象的な見る」との意味でも用いられます。
「実現=realization」は、「夢」 や「希望」 など 「抽象的=abstract」で「手に取ることができない=intangible」もの、が実際に起きてくることを表現できます。
似たような言い方では、<materialization> があります。
■Materializing one's dream becomes the driving force for that person to go forward in his or her life full of hardships.
(夢を実現することは、困難に満ちたその人生においてその人が前に進むための原動力となります)
※driving force………原動力
※hardship…………… 困難、苦難
<material> とは元々「物質」という意味です。 抽象的な願望などが、「形を持つ」「具体化する」というところから、<materialize> は何かを「実現する・具体化する」という意味になります。
この <materialize(具現化)> という表現は、西洋における <spirit (精霊)」に対する見方と深い関係にあるのが、また興味深いところ。
実体を持たない「精霊」が、人の肉体を持ってあらわれるときに、下記のように使われます。
■Spirit of heaven materialized and appeared in front of Jeanne d'Arc to convey God's message.
(天上の精霊がジャンヌ・ダルクの前に(人の肉体を伴って)顕(あらわ)れ、神のメッセージを伝えた)
※convey …………… 伝達する
2010年3月30日付けの Wall Street Journal 紙にも、 この<materialize> が登場していますが、金融や経済で、何らかの「計画」 が「実現」する(しない)ときに <materialize> は頻繁に用いられるので、使い方を覚えておくとよいでしょう。
■"Predictions that China would buy up the world and turn into a net exporter of direct investment did not materialize."
(Daniel Rosen of Rhodium Group on The Wall Street Journal's China Real Time Report blog).
(「中国が世界を買い占め、直接投資の純輸出国となるだろうという予測は現実のものとはならなかった」)
※turn into…………… ~に変わる
※a net exporter……… 輸出国
URL:
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303410404575151332914115048.html
これは、中国におけるM&A件数が、複雑な法規制などにより、期待されたほど進んでおらず、最近多くの巨大M&A案件が破談に終わるケースが続いていることから、金融ビジネスにおいて中国は依然として「海外からの投資」が「海外への投資」よりも大きく、巨額の外貨貯蓄が溜まり続けていることを指摘した記事で引用されたエコノミストのコメントです。
<deal(ディール)>と呼ばれる金融案件、M&A案件などが、実際に起こること、 話し合いの段階から、 実行段階に移行することを <materialize> で表すのです。上に引用したケースでは <not mate rialize> と否定形です。<materialize> は、 元来「精霊の顕現・具現」という抽象的なことをも意味する語ですから、 何か 「もやもや」「曖昧模糊」としたものに終始している、という印象が <not realize> よりも強くなります。 中国における金融関連の法律が、欧米の水準とはかけ離れたものであることも同じ記事で指摘されているので、<materialize> という語の選択には、そのような含意があると見ることもできます。
さて、「実現する」という意味の英語で私がすきなコトバがあります。
<fulfillment>
です。仕事・計画などが実際に「遂行」、「実行」、「実現」、あるいは「終了」した場合に使われ、 冒頭に上げた 「自己実現」も <self fulfillment> と表現することができます。 これは法的な文章でも、
■The terms of contract were fulfilled.
(契約の条件事項は実行された)
のように使うことができますが、<fill(満たす)>、という言葉から来ているので、<realize>、<materialize> よりも、「喜ばしい」 感じを出すことができます:
■He feels a strong sense of fulfillment rise up from his heart when he sees his baby after retuning home from a day's work.
(彼は、一日の仕事を終えて帰宅し、自分の赤ちゃんを見ると、心の中から、強い満足感が湧き上がってくるのを感じます)
<fulfillment> は、成就、達成感などの意味もありますから、「夢」にもお似合いです:
■Each day, you are one step closer to the fulfillment of your wishes.
(あなたの願いの成就へと、あなたは毎日一歩ずつ近づいているのです)
■Hoping that your hopes, wishes, and dreams would realize, materialize, and be fulfilled.
(あなたの希望、 願い、 そして夢が実現し、具現化し、満たされますように……)







