急いては事をし損じる
~Don't rush, be patient~
生きていると数々の失敗があります。失敗は成功のもと、"Failure is the key to success".と言いますが、それほど「失敗」は万人が経験するもの。確かにその通りですが、「失敗」を避けることができれば、それに越したことは無いはず。ではどうやって失敗をせずに済むのか? 私の経験で言うと、それは:
■Don't rush things.
(焦らないこと)
に尽きます。
報道の現場では、時間と情報に追われてついつい焦ってしまいます。「ニュース/news」 とは「新しい情報」のことですから、誰よりも新しい情報を得るために、急ぐ。ですが皮肉なことに、急げば急ぐほど、焦ってしまいます。結果として周囲の状況が見えなくなり、重要な情報を見落としたりと、致命的なミスにつながります。
そんな「急ぎ、焦る」負のスパイラルからの脱出方法はただひとつ。英語で言えば:
■Be composed.
(落ち着くこと)
です。 絵画などの構図を意味する 「コンポジション/composition(compose の名詞形)」という言葉があることから分かるように、compose の第一の意味は「要素を結び付けて全体を構成する、組み立てる」こと。それはつまり「整理する」こと。日本語でも、「気持ちを整理する」こととは「気持ちを落ち着ける」ことですが、英語でも compose は「気持ちを落ち着ける」の意味で用いられます。 子供が落ち着かない様子でいると、親がこうたしなめます:
■Compose yourself!
(落ち着きなさい!)
私も、小さいころからしょっちゅう、そう注意されてきました。私は元来せっかちで焦り性です。その性分が「好奇心旺盛で、新しいものにはすぐ飛びつく」というポジティブな形で現れてくれる分にはいいのですが、冷静にならないといけない場面で焦ってしまうと厄介です。
「焦る」= <rush things> と冒頭でご紹介しましたが、<rush> は「ラッシュアワー」の<rush> です。要するに、皆が一斉に「急ぐ」ことによって道路や電車が混雑する時間帯。最近は、渋滞を避けるために、フレックスタイム制が増え、「ラッシュ」は緩和される傾向にあるようです。高度経済成長期とバブルを経て、充分すぎるほど急ぎ、焦ってきた私たち日本人は、少しずつ、焦らず、ゆっくりやっていくことの美徳を再発見しつつあるのかもしれません。
重大なニュースを現場から生中継するとき、「七尾はいつも落ち着いているな」と言われるのですが、私はいつも極度に緊張していました。でも、災害現場などの、刻一刻と情勢が変化してゆく現場からの中継で何よりも重要なのは「落ち着いて」、情報を整理し、伝えること。だから、中継一時間前までは、それこそトイレで吐くほどに緊張することが数々ありました。それでも、実際に「いざ中継」となると不思議と落ち着くことができるのです。それは、取材に協力してくださった方々の表情を具体的に思い浮かべることができたからです。そのことを地震などの被災地での取材から学ぶことができました。
それでも気持ちがはやってどうしようもない時は、仕事でもプライベートでも、自分にこう言い聞かせるようにしています:
■Slow down, don't rush, and be patient. You'll get there eventually.
(ペースを落とせ、焦るな、辛抱。そのうち辿りつける)
patient の語幹である <pati> は、ラテン語で「苦しむ、耐える」という意味です。現代英語でも「病人・患者」を <patient(名詞)>と言うことにその名残が見られます。つまり、<patient(形容詞)>とは、「苦しみ」や「痛み」にじっくりと耐えること。
大事なのは、英語の <patient> は「辛抱」 のみならず「寛容」をも表現できること。例えば、思春期の悩みを抱える息子(娘)を母が見守るような状況では:
■When her son was in trouble, she did exactly what a mother is supposed to do; she waited patiently until he came to her and asked for her help.
(息子が問題を抱えていた時、彼女はまさに母親がするべきことをした。彼女は、 息子が母親の助けを求めてくるまで寛容に待ったのだ)
「辛抱強く待った」と訳しても間違いではありませんが、この場合、息子を案じてついちょっかいを出したいとはやる自分の気持ちを抑え、「優しく」じっくりと待った、というニュアンスを残すために寛容」にしました。
12月は「師走(しわす)」。年の瀬は「師も走る」ほど忙しくなる時期だからこそ:
■Don't rush. Be patient.
という姿勢を大事にしてみてはいかがでしょう。








