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2009年11月 4日 (水)

オバマ大統領平和賞授賞の理由と受賞コメントから学ぶ英語

前回は、ノーベル賞の創設者、アルフレッド・ノーベル氏がそもそもどういう理念に基づいて賞を設けたかについて振り返ってみました。そこに記された基本理念を見ると、一部では「時期尚早」との声もあるオバマ大統領受賞にも納得のいく点が多いことがわかりました。今回は、ノルウェー・ノーベル委員会が発表した授賞理由と、オバマ大統領の受賞を受けてのスピーチを見ていきましょう。ノルウェー国会が選んだ委員によって発表された授賞理由の全文は、以下のホームページで読むことができます。

ノーベル平和賞HP:
http://nobelpeaceprize.org/en_GB/home/announce-2009/

具体的には、核廃絶に向けたオバマ大統領の姿勢などが授賞理由として挙げられていますがが、中でもノルウェー・ノーベル委員会がオバマ大統領をどのように「見ている」のかがよくわかるものがこちら:

"Only very rarely has a person to the same extent as Obama captured the world's attention and given its people hope for a better future."
(「オバマ氏(大統領)ほどに世界の注目を集め、(世界の)人々によりよき未来への希望を与える人は滅多にいない。」)

to the (same, great, certain) extent as (of)~ ……~ほどの程度に(大きなレベルで、相当の程度で)

ここには、オバマ大統領のキーワードである <HOPE(希望)> が出てきます。「希望」を与えることに関して、今世界でオバマ大統領の右に出るものはいない、そう評価しているのです。

実は興味深い事実があります。ノーベル平和賞の候補者は、その年の2月1日に決定されます。これはオバマ氏が大統領に就任した、たった12日後。アメリカ合衆国内では、「オバマ大統領はまだ何の成果も出していないし、国民医療保険制度改革でもアメリカ国民をまとめられないでいる」ということから、<premature(時期尚早だ)> との批判があります。しかし、上記の様にオバマ上院議員が大統領になる以前から選考委員は「オバマ氏」を強く意識していたのですから、「早いか・遅いか」は選考の過程で問題にはならなかった、ということではないでしょうか。

つまり、

What counts is not the result, but rather, it's the fact that President Obama inspired people around the world.
(大事なのは結果ではなく、オバマ大統領が世界中の人々に勇気を与えたという事実)

なのです。

今回のノーベル平和賞授賞は長きに渡る「貢献」と「成果」への事後的な評価ではなく、「希望」を与える大統領の未来への「可能性」への「応援」と見てとることができます。ノーベル平和賞は、「自由と平和」を推進するための「政治的意図」を背景に、特定の政治指導者にエールを送るために与えられることがあります。例えば旧ソビエト連邦の改革に臨んだミハイル・ゴルバチョフ(当時)書記長授賞などがそれにあたるでしょう。今回のオバマ大統領もそのようなパターンに近いものと思われます。

そのノルウェー・ノーベル委員会の意図は、オバマ大統領自身にもよく伝わったようで、受賞のニュースが入った朝、ホワイトハウスでオバマ大統領はまず次のようにコメントしています:

"I am both surprised and deeply humbled....To be honest, I do not feel that I deserve to be in the company of so many of the transformative figures who've been honored by this prize, men and women who've inspired me."
(「私は (受賞に関して) 驚いているとともに謙虚な気持ちになっています……正直なところ、私は自分が、この賞の栄誉を受けた多くの世界を変えてきた人物たち、私自身が勇気をもらった男性たち、女性たちの中に名を連ねるに値するとは感じていません」)

to be in the company of ~ ……… (誰々、人など)と一緒に
ここでは、これまでのノーベル平和賞受賞者のと一緒に、並列される、というところから「名を連ねる」と訳しました。

transformative figures ……… 世界を変えた人物たち
figure は姿、形、なども意味しますが「人物」の意味もあります。


<humbled(つつましやかな・謙虚な気持ちになる)> ということはつまり、「まだ早いのでは?」という声が挙がることはオバマ大統領自身もよく分かっているのです。また、将来への期待を込めての授賞であることも、真摯に受け止める姿勢を示しています:

"And I know that throughout history, the Nobel Peace Prize has not just been used to honor specific achievement; it's also been used as means to give momentum to a set of causes. And that is why I will accept this award as a callto action... to confront the common challenges of the 21st century."
(「(一方で)特定の功績を讃えるためにノーベル平和賞が用いられてきただけではないことも知っています。(この賞は)ある種の目的に勢いを与える手段としても用いられてきました。だからこそ私はこの賞は行動を促す呼びかけとして受諾します……それは21世紀の(世界の人々に)共通の難題に立ち向かっていくために」)

use as means to~ …… 手段として用いる
give momentum …… 勢いを与える
勢い、趨勢(すうせい)。数学では速力を表します。

call to action …… 行動を促す
common challenges
challenges は「人類や権威」など、より大きなものへの「挑戦」、あるいは「努力目標」「難題、難問」という意味。ここでオバマ大統領が言っている「チャレンジ」は「戦争」や「環境破壊」などの、人類共通の大きな問題、難問、困難のこと。


オバマ大統領ノーベル平和賞受賞を受けてのスピーチの動画:
http://edition.cnn.com/2009/WORLD/europe/10/09/nobel.peace.prize/index.html#cnnSTCVideo

さらにオバマ大統領は、次の様にも述べています:

These challenges can't be met by any one leader or any one nation.
(これらの困難な諸問題(難問)は、一人の指導者あるいはひとつの国によって克服できるものではない)

meet (a) challenge ……(困難・問題など)に取り組む、を克服する

環境問題や国際的な対立は、アメリカ一国だけで解決できるものではないからこそ、世界中の人々、指導者たちと手を携え、協力しないといけない、ということなのでしょう。このコメントには、「このノーベル平和賞は、自分ひとりの受賞ではない、世界の人を代表して私が受けただけだ」というメッセージが隠されているように思います。

そのオバマ大統領の気持ちをよく表すのが以下のエピソードへの言及でした:

"After I received the news, Malia walked in and said "Daddy, you won the Nobel Peace Prize, <AND> it's Bo's birthday." And then Sasha added "Plus, we have a three-day weekend coming up." So it's good to have kids to keep things in perspective."
(「(受賞の)ニュースを知らされたあと (長女の) マリーアがやってきて、『パパ、ノーベル平和賞を受賞したけど、今日はボー(オバマ家の犬)の誕生日だからね』と言い、さらに(次女の)サッシャが『あと、もうすぐ三連休だからね』と付け加えました。ですから、子供たちに自分の立場を確認させてもらえるのはいいことです」)

keep things in perspective とは、 それぞれのものごとの関係を把握した上で全体が判断できる=「自分の立場を知る」こと。簡単にいうと「バランス感覚を保つ」こと。自分の娘たちにクギをさされた話題をきっかけに受賞への思いを語ったのは、、「私はまだまだスタートしたばかりの大統領です。それ以前に一人の人間です。一人の父親としても、 果たすべき義務があり、 できていないこともあります。子供たちにそのことを念を押されました。ましてや、ノーベル平和賞を受賞したことに関しては本当に謙虚な気持ちでいます。これから頑張るのでよろしくお願いします」という気持ちを伝えたかったからではないでしょうか。

何気ない家族の話のようでいて、世界中の人に親近感を与えつつ、自分の政治的立場をも表現するこの語りかけ方は、オバマ大統領ならではの「人の心に届く」伝え方。これは、ノーベル平和賞受賞コメントでなくても、私たちの日々の生活でも参考となりそうです。