前の記事へ |  トップページへ |  次の記事へ

2009年1月21日 (水)

2009年、輝ける「銀のふちどり」大作戦!
~Silver Lining~

今回が2009年最初の Express Yourself です。遅ればせながら今年もよろしくお願い申しあげます。さて、最近私はひとつの英語表現に注目しています。それは

silver lining

です。この表現から、あなたはどういう印象を受けるでしょうか? 
私は初めてこの英語を見たとき、何だかキレイで楽しい感じがして、キラキラした言葉だな、と思いました。

lining には二つの意味があり、両方とも服飾関係で使われています。男性の方はスーツを仕立てるときに、「ライニング」の色や素材を気にされますからご存じの方も多いと思いますが、「裏地・裏あて」を指します。もう一つは線で飾りをつける「縁飾り」です。女性モノのお洋服でサテン地の細い布で袖などを縁取るものを「ライニング」と言うことがあります。後者は、lining line、「線」という言葉から由来していることを表しています。

私は「silver lining」から何となくブロードウェー・ミュージカルのレビューの幕開けのようなものを想像しました。いささか想像力たくましすぎる感じもいたしますが(笑)幕が上がってゆくとステージ上のキラキラしたセットの輝きがもれてきてワクワクする感じ、 というのが私が silver lining という言葉に対して抱いた第一印象です。さて、この表現の正確な意味には後ほど戻ることにして、いったんまったく逆の意味の英単語をご紹介しましょう。
2009年の幕開けは、一言でいうと:

grim

でした。
grim とは「厳しい、容赦のない、険しい」(ランダムハウス英和大辞典)といった意味で、特に最近では経済ニュースによく使われます:

The economic outlook of the year 2009 looks grim.
(2009年の経済の展望は厳しいものである)

経済のみならず、新年早々パレスチナではイスラエルによる空爆が止まず、

The prospect of international politics appears dire.
(国際政治の今後の見通しは非常に困難である)

といった表現が新聞などで目立ちました。「dire」は「恐ろしい、陰惨な」(ランダムハウス英和大辞典)という意味で、「grim」と同じく深刻で陰惨なニュースに用いられる形容詞です。

この「dire」と「grim」を英語メディアで見ない日はないと言っていいくらい頻繁に使われます。かく言う私もよく使います。一つの単語でいかにその状況が深刻かを端的に示すことができ、文章を書くときにある意味「便利な」言葉だからです。たとえば経済に関しては:

I know very well that the economic situation is not looking any better, that there are no signs of recovery and everyone thinks it's wiser to stick with pessimistic views for the time being.
(私は経済の状況がまったくよくなっていないということをよく分かっているし、回復の兆しも無く、誰もが今のところは悲観的見方を続けたほうが賢明だと考えている)

stick with ~   ~を続ける、~から離れない

ということを「dire」あるいは「grim」の一語で示すことができるのです。ただ最近、 ごくたまに経済ニュースで「silver lining」という表現を見かけるようになりました:

So where is the silver lining?

このような形で、現在の世界的不況に関する記事やテレビニュースで使われる場合、「この不況が終わるのはいつなのか?」「この不況はいつまで続くのか?」 という意味になります。 それは、この silver lining という表現が、もともと次のことわざから来ているからです:

Every cloud has a silver lining.

直訳すると、「すべての雲には銀の縁取りがある」となります。どういうことでしょう? 想像してみると、実はとてもシンプルなことわざなのです。どんなに分厚く、重たい灰色の雲に覆われていても、よく目をこらせば、その雲にも終わりはあって、端のところでは太陽の光がもれ、まるで銀色の縁取りのように見える、ということです。私の「ブロードウェー・ミュージカルのキラキラした幕開け」というイメージはあながち間違ってはいなかったと言えるのかもしれません(笑)。

つまり、Every cloud has a silver lining. とは、「どんな悪い状況も必ず好転する」「どんなに悲惨な状況にあっても、よく見れば必ず光明はさしてくる」ということです。silver lining が単独で使われる場合は、「光明・明るい兆し・好転の見通し・希望の光」といった意味になります。

Everyone knows that the current economic situation looks grim, there's nothing difficult to point that out.
Rather than reiterating how dire things are, shouldn't we take up the challenge to go find the silver lining?

(現在の経済状況が厳しいということは誰もが知っているし、そのことを指摘するのは何ら難しいことではありません。
どれほど物事が悲惨であることを繰り返し言うよりも、私たちは希望の光(明るい兆し)を探すことに挑戦するべきなのではないでしょうか?)

point(something)out   (何かを)指摘する
reiterate            繰り返し言う、反復する
take up the challenge  (何かの)挑戦に立ち向かう、
                   挑戦するものとして何かを取り上げる

映画、『オズの魔法使い』のテーマソング、『虹の彼方に』に、

Somewhere over the rainbow, skies are blue

という有名な一節があります。今私たちがいる場所の空はどんよりとした灰色でも、 どこかに 「銀色の縁取り」 があって、 その向こうには青い空が広がっているはずです。どれだけ 「dire」 かつ「grim」な経済状況にあるかをきちんと伝えることももちろん大事ではありますが、今はむしろ「銀の縁取り」を探すことの方が求められているように思います。

silver lining は、ただ単なる「好転の兆し」という無機質な日本語訳では表現しきれない、もっとキラキラと輝いていてステキな言葉なのです。

Where is your silver lining? I'm sure you'll find it if you look more closely!
(あなたの silver lining はどこにあるのでしょうか? よく見てみればきっと見つかると思いますよ!)

追記

この原稿は実はバラク・オバマ大統領就任演説の直前に入稿されています。 あなたは彼のスピーチからどんな 「silver lining」 を感じましたか? 次回の Express Yourself では改めてInaugural Speech、就任演説を振り返ってみたいと思います。