「インテリジェント」な英語とは?
「知的な人」と日本語で言うと、とてもよいイメージを与えます。日本語の 「知的」 は、その時のイントネーションや状況に応じて色々な「知性」を表現できます。ところが、英語だとそうはいきません。「知」の種類は千差万別なのです。 以前、 カタカナ英語の「スマート」 と英語の <smart> の違いについてコラムを書きました:
http://blog.asahipress.com/express_yourself/2008/06/post_5d25.html
日本語で「スマートな人」というとほめ言葉になりますが、英語だと「切れ者すぎて得意げな感じ」というネガティブな意味合いが出てくることがあることをご紹介しました。「知性」に関するほめ言葉は、 何が賞賛に値するかは文化によって価値観も違い、 微妙なニュアンスに気を遣うことが大事になってきます。たとえば「インテリジェンスの高い人」のように、日本語の「知的」ではなく、あえて英単語の <intelligence> を「カタカナ英語」に直して使うことがありますが、このような場合は、その英語に関する日本語スピーカーの認識・印象は統一されていないので、誤解を生む可能性が出てきてしまいます。
この「インテリジェンスの高い人」=「知的な人」あるいは「知的レベルの高い人」を英語で表現するには、実は <intelligence> よりも <intellect> のほうが適しています。 なぜでしょう?
まず、intelligence と intellect の意味を英英辞書で引いてみましょう:
●intelligence
1. the ability to learn, understand and think in a logical way
about things.
2. secret information that is collected,
for ex. about a foreign country, especially one that is an enemy.
(参考:『オックスフォード現代英英辞典』)
日本語にすると <intelligence> は「ものごとについて論理的に思考し、理解し、学ぶ能力」ということ。つまり intelligence とは「基本的思考能力」と考えてよいでしょう。
(※軍事用語における intelligence とは、特に敵国である外国に関して集められた「機密情報」を指します)
では <intellect> はどうでしょうか:
●intellect
1. the ability to think in a logical way and understand things
especially at an advanced level.
2. a very intelligent person
(参考:『オックスフォード現代英英辞典』)
<intelligence> とほぼ同じですが、 違いは intellect のほうが「より高いレベル」の「知性・知力」を意味します。intellect のほうが「インテリジェンス」よりも「より深い(高い)知性」なのです。
『オックスフォード現代英英辞典』の intelligence の項目には、次の例文が出てきます:
■He didn't even have the intelligence to call for an ambulance.
(彼は救急車を呼ぶという知性すら持ち合わせていなかった)
このような例文から、ネイティブ・スピーカーは「インテリジェンス」に対してどのようなイメージを持っていると考えられるでしょうか? 誰かが事故で大けがを負ったときなどに「救急車を呼ぶ」ことは、常識ある社会人に当然求められる「論理的思考・行動」であると言えるでしょう。 つまり、intelligence は、学問などの深く掘り下げてゆくような「知性」というよりは、もっと「基本的」な「知的能力」を指す単語なのです。
たとえば会社の上司に対して intelligence の「ある」という評価をした場合どうなるでしょうか:
■Our fund manager is a man of intelligence.
(我が社のファンド・マネジャーは情報収集能力に長けた人物です)
(※man of~で「~に長けた人物」)
「知性のある人物」ではなく「情報収集能力に長けた人物」と訳しました。なぜなら、一般的に目上の人物、ある程度の立場にある人物に対して intelligence は「知性」の度合いが十分でなく、「失礼」とまでは言わないものの、「ほめ言葉」には当たらないからです。
intelligence を形容詞で使う場合は:
■He is an intelligent man.
となりますが、これだと「知的な人物」というよりはむしろ、「賢い人物」に近い感じがします。「会社の上司が <知的な・知性のある> 人物である」と言いたい場合は、intellect が適しています:
■Our manager is a man of intellect /He is an intellectual man.
では、日本語の「知的な人物」と同じ印象を与えるには英語ではどんな表現を使えばいいのでしょうか?
「知性 ・ 知力」 を表す言葉には他にも:
・<insightful> 洞察力のある、見識のある
・<wise > 知恵がある、賢い、賢明な
(ランダムハウス英和辞典)
などがあります。
特に「話し方」に焦点をあててみると <articulate> と <eloquent>があげられます:
■He is a very bright, articulate young politician.
(彼はとても聡明で、明瞭な思考能力のある若い政治家です/彼はとても聡明で、知的な話し方をする若い政治家です)
<articulate> は 「話し方がはっきりとしていて、要点をついている」、という意味で、人物に対しては「明瞭な思考のできる/知的な話し方をする」という評価になります。
■The senator spoke eloquently on the complex subject of social security, and convinced the crowd that a reform is a necessity.
(議員は社会保障という複雑なテーマについて明瞭かつ効果的に話し、改革が必要不可欠であることを群衆に納得させた)
<eloquent> は英和辞書を引くと「雄弁」と出てきますが、具体的に言うと「効果的かつ明瞭に」自分が伝えたいことを相手に伝え、説得する「表現力と言語能力」です。 「雄弁」 という日本語だと「力強さ」が際だってしまいますが <eloquent> は「人の心を動かす」という点において時に「優雅」でもあります。
最後に、もともとはアメリカの口語表現ですが、近年では新聞記事などでもよく使われる <highbrow> という表現をご紹介しましょう:
■His highbrowed taste such as the ballet or the opera often gave out an impression that he is from the upper class, but he is actually a self-made man.
(オペラやバレエなどの教養趣味(文化的な趣味)は、彼が上流階級の出身だという印象を与えることが多いが、実は彼はたたき上げの人物だ)
<highbrow> は、特に高いレベルの「知性」を持っている、 文化的造詣が深く教養のある「とても知的」な人物を意味しますが、その「レベルが高すぎる」 ために時に 「嫌味なインテリ」というネガティブな意味をこめられることもあります。
「知性」の度合いというのは、その状況によって高すぎても低すぎても具合が悪いものであるということが、英語と日本語の「知」に関係した表現を見てみるとよくわかります。
英語に関して言えば:
■The goal is to be able to speak English articulately and eloquently. In order to achieve this goal, the best way is to accumulate as much expressions and vocabularies as possible.
(ゴールは明瞭かつ説得力のある英語を話せるようになることです。この目標を達成するための最善の道は、できるだけ多くの表現を学び語彙力を積み上げることです)







