“Do I Deserve You?”
私はアナタに「値するか」って?!
前回は「ありがたい」というふうにとらえると appreciate の使い勝手がよくなる、ということをご紹介しました。
これを読んだ知人がこんなメールを送ってきました:
appreciate で思い出したコトバがあります。だいぶ前、アメリカに出張した時に、メグ・ライアンとトム・ハンクスの『めぐり逢えたら』を観に行きました。最後の方のとても大事なシーンで、メグ・ライアンが I don't deserve you. って言うんです。 でも deserve の意味がよくわからなかったんです。この deserve 、アメリカ人はよく使うんですが、聞く度に『めぐり逢えたら』のトラウマを思い出します(苦笑)。この deserve 、なんとなく appreciate に似ているような気がするんです。
ふむふむ、 たしかに言われてみると、 deserve っていろんな場 面でよく使われるのにどうも正体がつかみにくい単語です。
改めて辞書の意味を見てみましょう:
deserve
《自動詞》(賞・罰を)受けるに値する
《他動詞》(賞・罰を)受けるに値する-E-DICより
さて、メグ・ライアンは I don't deserve you. と言っていたようですが、この使い方はあまり聞きません。その理由は、のちほどご説明しますが、一般的なのは:
です。
これは、たいていは、付き合っている男性にフラれたり浮気された女性に対して、女友達がかけてあげる慰めのセンテンスです。
直訳すると、「彼はあなたに値しないわ」。
でもそんな堅苦しい言い方、わんわん泣きわめいている友達にかけるコトバではないですよね。
じゃあ何かな? と思ったらちょうどいい日本語がありました。
以前も出てきましたが、「もったいない」という日本語。
He doesn't deserve you.
(あなたは彼なんかにはもったいないわよ)
つまり、
「あなたにはもっといい男性がいるわよ」
「彼はあなたには釣り合わないわよ」
です。英語で言うと、
You deserve a better man.
あるいは、ただ You deserve better. だけでも通じます。
「あなた」はステキな女性なんだから、「もっといい男性」= a better man に「値する」/と付き合う「価値がある」女性だ、 ということです。
映画『めぐり逢えたら』のメグ・ライアン(Meg Ryan)のセリフ、 I don't deserve you. は、
「あなたは私にはもったいなすぎるわ(もったいないわ)」
です。これって、アメリカ人の使い方としてはちょっと珍しいと思いませんか? ずいぶん自己主張が弱い感じがしませんか?
日本では時代劇などによく出てくる言い方ですよね。たとえば水戸黄門に助けられた町人が目に涙を浮かべ、
「黄門さま! もったいのうございます!」
と言う。要するに「身に余る光栄」。
「身に余る」ってことは「身の丈にちょうどよくない」、「身に値しない」ということですから、英語で言うとこんな感じ:
Your Highness Koumon, I don't deserve this!
でも、アメリカ社会には自分に「価値」があることを主張した方がよい、という風潮がありますから、映画のメグ・ライアンのように自ら「価値がない、もったいのうございます」などと奥ゆかしいことを言うのはよっぽどのことです。
でも、『めぐり逢えたら』には、なるほどこの場面では I don't deserve you. と言うしかない! とうならせるものがありますから、よかったらご覧ください。
他にもいくつか deserve の使い方をご紹介しましょう;
If you expect to be promoted, you have to demonstrate that you deserve it.
(昇進させてもらいたいなら、あなたにその資格があるってことを示さないといけない/昇進を期待するなら、 あなたがそれに値することを見せないといけない)
Thank you so much for helping me out when my plan was criticized at the meeting.
(会議で僕のプランが批判されたときに助け舟を出してくれてありがとう)
Don't mention it. Your plan deserves a lot more.
(気にするなよ(当然だよ)。君の計画はもっと評価されてしかるべきだよ)
Have the face you deserve at forty.
(<慣用句>40になったら自分の顔に責任を持て)
いかがでしょう。
deserve 、けっこう使えますよね。
さて、バレンタインデーが過ぎたばかりですが、男性の皆様はもらったチョコレートを前にしていろいろな意味で
Do I deserve this?
とお考えになったのではないでしょうか。義理チョコなら
How much does this chocolate deserve in return on the White Day?
(このチョコはホワイト・デーのお返しにはいくらぐらいが適当なんだろうか?)
もし本命なら、あなたの心をよぎったのは次のどちらの英文でしょうか?
Do I deserve her?
(僕は彼女に値するだろうか?
=彼女は僕にはもったいないんじゃないか?)
Does she deserve me?
(彼女は僕に値するだろうか?
=僕は彼女にはもったいないんじゃないか?)
本当に deserve は使い方によってさまざまに色が変わる豊かなコトバです。
ところで、私が好きな曲に New Radicals の You Get What You Give があります。現代の消費文化を痛烈に批判する曲です。
You get what you give. =「与えた分しか返ってこない」
つまり「因果応報」のシビアな社会に私たちは生きているということ。でも、 New Radicals は Don't give up. =「あきらめるな」とも歌っているんですね。ということはつまり、
と言い換えることができます。
悪いことをすれば自分に返ってくる。
でも、「良い」ことをすれば、人を幸せにすれば、それだけ自分に返ってくる。
You worked hard, you deserve to be happy.
(頑張った君には、それだけ<幸せ>になる資格がある)
deserve というコトバは、 頑張らない人間には厳しく、頑張る人間には相応の見返りがあるという<実力社会アメリカ>の特徴が色濃く表れている気がします。








