「位置コトバ」の“inside out”
このとてつもなく一般的な英語のあいさつが、一体なぜ「調子はどう?」と訳されるのか、改めて考えてみるとわからないと思いませんか?
up 、「上」がどうしたというのでしょうか。
up down left right out in のように、「位置」を表す「位置コトバ」は、英語のなかでは縁の下の力持ち、いたるところで活躍しているんです。今回はこの「位置コトバ」に注目してみましょう。
A friend: What's up?
Aika: Not much, some ups and downs, though.
日本語に訳しますと
また、語彙(ごい)が足りず、伝えたいことを表現するときに言葉に詰まっても「位置コトバ」を使って急場をしのぐことができますし、ネイティブから「英語を使いこなしているな」と思われることもあるんですよ。
まず、 ups and downs について。
結婚したてのカップルに「新婚生活はどう?」と聞いてみます。
A: How's your newly-married life?
(A:新婚生活はどう?)
B: Oh, I don't know, some ups and downs, I guess.
(んー、わかんない、まあよかったり悪かったりかな)
新婚生活といっても、いざ生活を共にしてみるといろいろとお互いの生活のパターンや価値観の違いで行き違いがあったりと、まぁ誰にでも訪れるであろう「波」があるのよ、 ということが ups and downs を使うだけでとってもよく伝わります。
いちばん感覚的に近い日本語は、「山あり谷あり」ですね。
「新婚生活は、山あり谷ありって感じよ」になります。
このほかにも ups and downs は、 「複数の上下」ということで株価や経済の動向にもよく使われますから、 CNNの経済ニュースでよく出てきます。
他には「低さ」を中心にした口語表現で down and low というものがあります。わかりやすい意味としては、もちろん「ダウン」な気持ちを表します。
I'm feeling down and low, my TOEIC result was awful.
(TOEICの結果が最悪で落ち込んでるの)
次のような使い方もあります:
Colleague A: It hasn't been made public yet, so you have to
keep it down and low, but I'm going to be transferred to the back office.
(同僚A:まだ公になってないから秘密にしておいてほしいんだけど、総務部に異動になったんだ)
この場合の down and low は、ある情報を「下に」「低く」「伏せて」おいてほしい、という意味です。あるいは、組織の「下の方で」留めておいてほしい、ということもあります。
back office をここでは「総務部」と訳しましたが、 たとえば外資系金融会社などで、トレーダーなどの最前線で仕事をしている人を front 、 秘書課や庶務課などの総務的な部署を総称して、 back office と呼びます。「後方支援」というワケですね。
up や down に「サイド」を付ける表現もよく耳にします。
I know this company inside out.
(私はこの会社を何から何まで(隅から隅まで)知っている)
My world is upside down since I broke up with my boyfriend.
(彼氏と別れてから世界はめちゃくちゃよ)
upside down は上だったものが下になってしまう、つまり「めちゃくちゃ」「混乱」を表します。
The downside of this contract is its cost, the upside is that it's promising.
(この契約の「悪い面」はコスト(が高いこと)、「よい面」はその将来性だ)…upside/downside と連続して用います。
up に注目してみると、ちょっと面白いことがあります。
makeup =「お化粧」、 patch up =「化粧直し」ですが、両方とも人間関係の修復、「仲直り」としても使われるんです。
I made up with my boyfriend.
(彼氏と仲直りしたわ)
I patched things up with my boyfriend.
(彼氏とよりを戻したわ)
patch up も「仲直り」なのですが、「取り繕う」、つまりパッチワークのように裂け目を縫い合わせる、という感じで、よりを戻しても潜在的にまだ不仲の可能性があるというニュアンスがあり、 make up よりも「一時的」な「仲直り」になります。
make out =「イチャイチャする」ですから up と out は似たような形で使われることが多いのですが、 そもそも「上」と「外」では向かう「方向」が違いますから、当然ながら意味が違ってきます。
あれ、この場合の「位置コトバ」はどういう意味で使われているのかな? とわからなくなった場合は、そのコトバ本来の意味に戻って想像してみるとよいでしょう。たとえばこんな手強い表現も:
He's someone who is willing to go out of his ways for the others.
日本語に訳すと…
「彼は他人のために(わざわざ)尽くすことができる人だ」。
あるいは、「彼は他人のために自分を犠牲にできる人だ」でも大丈夫でしょう。
「え~~~っ?! なんでそうなるの?!」という感じがしますよね(笑)。
でも素直に考えてみると、「彼」は「彼の方法」= his ways の「外」= out に出ることができる人、 つまり自分の「安心できる場所」の「外」に「出る」用意のある人だ、ということで「他人に尽くすことができる人、利己心を抑えて他人のために動くことができる人物」になるのです。
どうやら out については、 別にお話しする機会を設けたほうがいいようですね!
I'm out of space to talk about ‘out,’ so I'd better put it out for the next ‘express yourself’!
(スペースが足りない(out of space)ので、次回の『Express Yourself』に回したほうがよさそうですね!)







