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2006年8月23日 (水)

Express Yourself 予告編  
アメリカ人だって「ホンネ」と「タテマエ」を大事にする! ~英語の「びみょ~」 

はじめまして、七尾藍佳と申します。

「生きた英語を学び、英語を通してアメリカ合衆国などの英語圏の文化や社会を考える」

そんなテーマで連載をさせていただくことになりました。FMラジオの朝のニュース番組でキャスターを務める傍ら、エッセイストとしても活動しています。翻訳や通訳なども行っています。

さて、「生きた英語」

日本の英語教育では「生きた英語」に触れる機会が少ない、という声をよく聞きます。でも「生きた英語」って何でしょうか?

まず、コミュニケーションをネイティブスピーカーと取ること、が第一に挙げられると思います。そのためには「リスニング」が大事と思われがちですが、私は、コミュニケーションはまず「意識」か ら始まると考えています。

「英語を使って、世界と渡り合っていこう」という視点をお持ちの読者の皆様は、もうすでに「生きた英語」の大きな難関をクリアされているように思います。

ひとつ、英語の単語を多く覚えただけで 世界が広がって、この世界に住んでいるより多くの人と何か新しい ものを共有できるって考えると、とってもステキですよね。

また、ただ単語の「辞書的意味」だけでなく、そのコトバが誕生した歴史的経緯や、今現在どんな風に「生きて」使われているのか、同じアメリカ合衆国でも東海岸と西海岸での使われ方の違いを知ってゆくと、「コトバ」の新たな地平が開けてきます。

「単語」の殻を破り、大いなる冒険の世界へと飛び出してゆくのです。

この連載のタイトルは

『Express Yourself <ビミョ~>な日本語、英語で言ってみよう!』

です。

『大辞林第二版』では「微妙」という言葉の本来の意味は

(1) なんともいえない味わいや美しさがあって、おもむき深い・こと(さま)。
(2) はっきりととらえられないほど細かく、複雑で難しい・こと(さま)。

とあります。「とらえようのない、繊細な」有様というのは、謎めいた「日本的美」として長らく西洋を魅了しつづけています。

その「はっきりととらえられない」性質をうまく利用しているのが最近の若者言葉である「ビミョ~」

価値判断を求められたときに「ビミョ~」と答える若い世代の人は多いですね。例えば、若い独身女性が、特定の男性について、「こないだ合コンで会った彼のこと、どう?」と聞かれたとします。その女性が次のように答えます。

「ビミョ~」

この時、「ビミョ~」という言葉の真意は、

「本当は興味がないんだけど、そう直接的に言うのははばかられるので、あえて<ビミョ~>という言葉を用いているが、そこのところを<推し量って>欲しい」

ですね。人間関係に角が立ちません。

この新「ビミョ~」なる言葉は、非常に「とらえどころのない」表現であり、かつ「ホンネとタテマエ」をたった一言で成立させてしまう点で、とても「日本的」だと私は常日頃感じていました。

しかし、このような表現は、実は「日本的」というわけではありません。英語にも、まさに「ビミョ~」の訳語としてドンぴしゃりな表現があるのです。先の女子トークを英語で再現してみましょう。

Ya_2What do you think of that guy whom you met at the party the other day?
(こないだ合コンで会った彼のこと、どう?)
It depends...
(ビミョ~)

そう、英語には It depends. という表現があるのです。 これは

Ya_2It depends on (something).

の省略形です。 depend は「~による、~に左右される」という意味ですが、 It depends. では、「彼のことをどう思うか」が「何」に左右されるのかが、あいまいです。たとえば(カッコ)にはこんなコトバが入るかもしれません。

Ya_2It depends on the way you look at it.
(それは見方による)

the way you look at it =「見方」ですから、紹介された「彼」のことをどう思うか、と問われたときに「それは見方によるわね~」という意見が It depends. という短い答の中に含まれていることがありうるわけです。

日本語でも「う~ん、それはビミョ~なんですよ~」と誰かが言ったとすると、そう言われた相手は、そこで話が終わると思う人は少ないですよね。

そのあとに「なぜビミョ~なのか」という説明が当然のことながら相手からあるだろうという見込み、あるいは期待を 持ちます。

それは英語の It depends. でも同様です。

何かの価値判断を相手に求めて、 It depends. という答が返ってきた場合、相手が「言いにくいなにか」を説明するのを待ったり、あるいは、「ああ、なにか答えにくいんだな、それではこの場ではこのままにしておいてあげよう」と考える場合もあるかもしれない。

It depends.「ホンネとタテマエ」を使い分ける英語表現なのです。

「ホンネとタテマエ」。

「微妙な表現」。

わたしたちは、こういったものが日本語、日本人、日本文化に特有のものだと思いがちですが、実は英語の世界の方がよっぽどそうなのかもしれません。

それは当然と言えば当然なのです。なぜなら、近年多様化が進んでいるとはいえ、依然として日本は島国で、単一な文化を保っている側面が非常に強い。

ということは、相手が言っていることがそれほど自分の理解とずれるということは、実はそうそうないのです。

一方、アメリカ合衆国は、世界中からやってきた移民によって構成されている国ですから、よっぽど用心してコミュニケーションを取らなくてはいけません。

アメリカ人がとっても「フレンドリー」なのは、異なる文化的背景からやってきた人に対峙したときに「私はあなたの敵ではありませんよ、あなたに親しみを持って接していきますよ、だからあなたもそうしてくださいね」という意識の表れだとも言えるのです。

ともすると、アメリカの方が日本よりもよっぽど「ホンネとタテマエ」を必要としている国だと言えるのかもしれません。

そういった「意識」を持って「英語」と接してゆけば、より「生きた英語」を身に付けることができるのではないでしょうか。

次回は何をテーマに扱うのか、それは

Ya_2It depends...!
(乞うご期待…!)

とお答えしておきましょうか。
これからどうぞよろしくお願い申し上げます。

七尾藍佳