Vol.12『折る土偶ちゃん』

私と土偶との出会いはほんの数年前だった…
就活中に訪れた東京国立博物館に遮光器土偶がいた。土偶のことは全く知らなかった。
関西で生まれ育った私のまわりには古墳や埴輪ばかりだったので、へえ!面白いなあ!と、その時はそんな感じで。
京都で古きものを学び、次は新しい何かが見たいな!と就職を機にやって来た東京。仕事でなんやかんやあり、落ち込み、元気を出すために訪れた展覧会でみみずく土偶と出会い、(前に見た遮光器土偶と形も大きさも全然違うやん…えっ、土偶って何…)とあれよあれよと土偶の世界へと入り込んでしまった。
古くて新しかった。
『折る土偶ちゃん』は、その名の通り、土偶を「折る」のである。
なんせ土偶を作るのは大変である。粘土を捏ね・焼き、あの形を再現するのは、たとえ土偶愛があっても至難の難…私も自分で土偶を作れず、板状土偶のいる青森まで土偶作りに行ったくらいだ。しかし!この本は!なんと!どこでもいつでも、紙を折るだけで土偶ができるのである!
本には、土偶の解説とともに、折り線のついた「土偶折り紙」が。折り方を見ながら山折り、谷折りを繰り返すと、自分の手のひらから土偶が出土するのである。
『折る土偶ちゃん』の著者は、解説が譽田亜紀子さん、折り紙がCOCHAさん。
譽田亜紀子さんの土偶解説はとっても楽しい。土偶だけではなく、土偶を発見された方々にもスポットを当て、縄文時代と現代とが繋がった、その瞬間を切り取る。この文章に登場する土偶たちも、譽田さんの手にかかれば、クスッと笑えて、親近感の持てる友達のようになってしまう(たとえば、板状土偶のページには「土偶だってパンツをはくのよ!」と。パンツを履いた土偶って何?と気になってくることでしょう)。
土偶折り紙を生み出したCOCHAさんがデザインした可愛い装丁に、ついつい手に取ってしまったら最後、あなたも土偶のトリコである。ハッと気が付いたときには、一心不乱に土偶を折っている自分に気が付き、縄文人も、こんなふうに土偶を作っていたのかな?なんて無責任なことを考えたりするのだ。

マツオ(あ)さん
早稲田大学生協戸山店・書籍担当。
自分を書店員と呼んでもらっていいのか、いつも不安。イチ「本屋さん」になれるよう、
日々がんばります。いちばん最近衝撃を受けた本は『セッちゃん』(大島智子)。