Vol.7『怪人二十面相』
子供の頃から本が好きで、学校の図書室や区の図書館、果ては町内全ての本屋さんに入りびたり、本に囲まれてうっとりとしていた私が、気がついたら書店員になって早や20年が経とうとしています。
今ではかたわらに本がないと落ち着かないからだになってしまった私にも、一応最初の一冊というものがあった訳で、その一冊と出会ったがために今の私があるといっても過言ではないでしょう。果たしてその思い出の一冊とは… 前置きが長くてすみません。それは、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズ「怪人二十面相」であります。
おそらく小学校4年生くらいのことだったと思います。学校の図書室で偶然見つけたこの本のちょっと恐ろしげな表紙の絵が気になり、たまたま借りて帰った私は、あっという間にこの本に夢中になり、毎日のように図書室に通い次々と読みあさり、とうとうシリーズ全巻を読み切ってしまいました。
当時、夢見る少女だった私は小林少年に憧れ、自分も少年探偵団の一員になったつもりでいたものです。あれから随分月日が流れました。気がつけば夢見る少女は、少年探偵団の一員ではなく書店員となり、日々、本と格闘する毎日を送っているのであります。これというのも、あの本との出会いがあったからこそだと思っております。
当時の小学生の乏しいお小遣いでは、到底手に入れることの出来なかった単行本だったのですが、なんと、先月11月に当時の装丁のまま文庫化されたのです。ポプラ社さん、ありがとう!
ただ一つ気がかりなのは、今のところは全巻文庫化するか未定だということです。なんとかならないものでしょうか? ぜひともお願いしたいものです。二十面相の映画も公開されることですし…。私は、当時の自分に敬意を表して全て購入したいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
横田陽子さん
丸善お茶の水店にて文芸書を担当。最近読んでおもしろかった本は『オリンピックの身代金』(奥田英朗著)。これから読みたい本は12月中旬発売予定の佐々木譲さんの新刊。いまのモットーは“感謝と笑顔を忘れない”。
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