Vol.1 『歌舞伎のかわいい衣裳図鑑』

ふんだんにお金や時間をかけてつくられた豪奢なもののよさのわかる、三十代以降の大人の女性にお勧めしたい一冊をご紹介いたします。
この本の著者の君野倫子さんは、着物に関する多くの著作をお持ちですが、歌舞伎に関する著作ははじめてで、「衣裳」という視点から女性に歌舞伎を知ってほしいと考え、本書をつくられたのだそうです。
この本の魅力は特に表紙にあらわれておりますので、すこし説明させていただきます。朱色地の表紙には、緑のゆたかな振袖が広げられており、やはり朱色に揃えられた裾回しと半襟、帯と帯締めが着物の緑に非常に鮮やかに映え、また赤と緑ということでクリスマスのような華やいだ様子でございますから、おもわず手に取りたくなる気分になって参ります。
また表紙をめくると、その見返しは美しい紫色で、続く扉は朱色です。本を手に取り最初のページをめくっただけで、色彩がめくるめく歌舞伎座にきたかのような錯覚に陥り、うっすらと陶酔すら感じてしまいます。
こうした仕掛けもさることながら、歌舞伎の登場人物が纏う着物の色彩は非常にグラフィカルです。「歩くグラフィック・デザイン」といっても過言ではないほどなのですが、役によってはさらにその上にびっしりとした細やかな刺繍が施されます。
また、小物も豪奢で、本書に紹介されております、花魁役が何本も御髪に刺すべっ甲のかんざしや、「人形じけ」とよばれる絹でできた縦長のタッセルのような付け毛、長い長い五色の房がついた檜の扇など、どれもが「非日常」で、それらの小物が舞台でゆらめく様を想像するだけでも楽しめますし、本書の魅力はこの「めくるめく豪奢なイメージ」につきているといっても過言ではありません。
贅沢とお買物がお好きな働く女性の皆様、ひとたびの非日常への没入へと誘う、本書をぜひお楽しみ下さいませ。


